慣らし運転が終わったオレンジ号。
全開を含む高回転域の空燃比と点火時期調整の為、シャーシダイナモを使います。
セッティングには、実際に走って本物の負荷をかけてデータが最も間違いないのですが、ストリートでリッターバイクを全開迄加速してのデータ採取は現実的ではありませんので、その領域はシャーシダイナモを使用します。
最終的に出たセッティングは、実際に走行した場合の路面からの抵抗や高速度域で速度の2乗倍で増加する空気抵抗を勘案し、更にマージンを残せるように修正します。
ちなみに、上の動画の様に全開にしてセッティング出来るのは、燃料マップで言えば下の写真で青線でマークされている極一部分です。
ログデータで回転数毎開度を見るとこんな感じです。
3,000rpm程度での走行中、一気にスロットルを全開にしてレブリミッターが作動する迄回しています。
ただ、実際にリッターバイクでストリートを走行した場合、全走行時間の90%以上はこの写真の青く囲った領域になります。
サーキット走行を行う車両以外では、限りなく100%に近い時間がこの範囲内に収まります。
それでは何故ダイナモを使用して迄セッティングするのかと言えば、使用頻度が少ないとは言え、やはり全開域迄きちんとマップは必要であるのはもちろんですが、ダイナモを使用する事で車両個体やエンジンに合わせて最もパワーの出る空燃比や点火時期を確認する事が出来るからです。
例えば、一般的に言われる理想空燃比14.7に対してパワー空燃比が12.5等とはよく言われるのですが、実際に測定してみると弊社のダイナモの場合13.5〜12.0の間で最もパワーの出る数値は結構車両によって変わります。
ちなみに、このオレンジ号の場合は車載の空燃比計で12.4前後でピークパワーでしたが、あるレーサーでは12.0前後でした。
逆に13.0前後だったという車両もあります。
又、その時点での最大進角値もエンジンの仕様によって同じ空冷Zでも上死点前30°前後から40°オーバー迄非常に幅が広いです。
ここで全開測定しながらのセッティングは、車両個体によって異なるそれらの数値の目安を正しく探る作業でもあります。