Pistal racing 社製、72mmピストンをインストールしたZ1000J
補器類を戻しての火入れです。
ダイナモ上で、最初はほぼ無負荷から少しずつリターダーで負荷を与えながらピストンやリングの慣らしを行います。
ちなみにこのエンジン、ピストンをインストールした以外は完全にイコールコンディションとする為、シリンダーヘッドは取り外したまま、バルブもカムその他の部品はそのまま組付けしています。
ガスケットは流石に新品にしましたが、バルブタイミングもあえて元のままとしています。
例えばですが、消耗しきったもしくは明らかに不調となったエンジンをオーバーホールとしてヘッド内部の部品や吸排気系の機械的な仕様をリフレッシュや変更してしまっては、それがピストンによる違いかどうかは判らなくなります。
ちなみにピストン交換以前のこの車両は、0.5mmオーバーサイズの純正ピストンを組み込んだフルノーマルでのオーバーホールを行ってありました。
これを大口径スロットルボディを使用したフルコンインジェクション化でセッティングを行い、弊社で使用するシャーシダイナモでは104.61PSを記録しています。
ダイナモ上で測定出来る最高出力のみでオートバイの速さを語る事は出来ないのは、以前から何度か申し上げている通りですが、あくまで目安と考えると後輪出力でカタログ上の最大出力の102HP=103.4PSと同等のものが出ているという事で、絶好調を上回る状態のノーマルエンジンであったと受け取っていただいて良いかと思います。
(通常は、駆動系のフリクションロス等でカタログ上の10〜15%程度測定出力は下がって測定されるものです)
完全にイコールとする為、通常は消耗部品のイグニッションプラグも再使用です。
これはテストを兼ねて約1万km程このZ1000Jで使用しているイリジウムプラグです。
余談ですが、イグニッションプラグの寿命について。
まず、4輪の純正に採用されているイリジウムタイプの場合は10万km持つものがあると言われていたりしますが、2輪の場合はリッターバイクでも常用回転数が倍近く、しかもその多くは4輪の様に行程毎(クランク2回転に一回)でなく回転毎にスパークする同時点火ですので更に2倍となります。
そうなると点火回数的には4倍の速度で消耗となり、4輪の純正で10万km使用出来る様なものでも2輪は2万5000km程度となります。
こう聞くと、1万km程度ではまだまだなイメージがありますが、写真のイリジウムプラグはNGKラインナップでは市販汎用製品で、中心電極のみイリジウムで外部電極(アーム)は通常のものと変わらないタイプです。
この為乗用車では2万km、2輪の場合はやはり上記の計算通り1/4で5千kmからが交換の目安とされているそうです。
従って、それなりに使われているプラグという事になります。
推奨交換時期は過ぎていますが、日本製で交換目安迄のマージンが大きく取ってあるであろう事と、インジェクション化で割と適正な空燃比状態での使用環境であった為か、中心電極はもちろんアーム側にも目視出来る様な消耗は見えません為継続使用しています。
ただ、多少の性能劣化はあって当然かと思えます。
それでも、これを新品にしてしまっては今回のテストではフェアではありませんので、プラグコードやキャップそしてイグニッションコイルも含めて、あえて無交換にてテストしています。
新品に交換するのは、比較テストを終えてからにしてみようかと思います。
それはそれで別の意味のテストにはなるかも知れません。
PS:2輪でも最近のダイレクトイグニッション車で、シーケンシャル点火制御されて圧縮上死点のみスパークするモデルの場合はクランク2回転に一度のスパークの為、多少寿命が延びます。
コイルにプラグコードが付いている様な従来の同時点火モデルの場合は5千kmからを目安と考えられます。