Z1000Jのカムシャフト交換です。
このシリンダーヘッドはJ系でも後期のもので、使用履歴も短い為、カムホルダーへのヘリサート加工は行われてはいません。
いずれの整備時には行う必要があるかも知れませんが、それまでは雌ネジ部分をなるべく傷まない様注意して作業します。
特に脱着時にカムホルダーに対してバルブスプリングのテンションがかかった状態でボルトを締めたり緩めたりする事で、雌ネジは痛みます。
そこで、ボルトを緩める前に、この様にシャコ万と呼ばれるクランプで、カムホルダーを抑えます。
ホルダーが変形しない様、木で上面をブリッジして、下側の当たり部分にも養生しています。
こうしておけばボルトを緩めても、ホルダーが浮き上がって抜き取り中のねじ山係が浅い状態でボルトにテンションがかかる事はありません。
この後、シャコ万を緩めればホルダーは外れます。
組み込みする場合は、シャコ万でスムーズに抑えるのが難しい為、予め組み込み用のスタッド形状になっているツールボルトをヘッド側にねじ込んでから、ナットを使用してカムホルダーを着座させます。
バルブタイミングを確認したらクランクを回し、カムホルダーにバルブスプリングのテンションがかからない位置になったカムホルダーのボルトを正規のものに交換すれば、やはりヘッド側の雌ネジを痛めることがありません。
手順は少々面倒ですが、カム脱着によるヘッド側の痛みを最小限にすることが出来ます。
いずれはヘリサートしてやるにしても、長く使えた方が良いですし、既にヘリサート等で修理してあるなら尚更で、コイルが抜けてきてしまうと修理するにも結構な手間やコストとなりますので。
例えばそれがレース直前だったりしたら大変面倒です。
ちなみに、ツールボルトのセットについては、弊社のwebSHOPにても取り扱っています。
最近は、Z系以外の車両の整備にも結構買っていかれる方が増えました。
ところで、弊社ではこのボルトの使用頻度が非常に高い為、今回記事の整備車両では着座用のナットは販売キット用でなく工作機械の治具セット用のものを流用して使用しています。
プロユースなので、より耐久性の高いナットのセットで欲しいと言われる場合は別途お問い合わせ下さい。
余談ですが、Z1000J系はシリンダーヘッド上側にアイドラーではなく、ヘッドカバー側にカムチェーンのスライダーが付いているタイプの為、エンジン車載状態でもカバーの脱着が割と楽です。
Z系の場合カバーをフレームに擦りそうになるので、キャブを外して後ろ側に落とす様に外した方が簡単ですね。