弊社で製作する、ESTシリンダースリーブ素材の抜き取り検査です。
例えば、鋳造後の素材表面の外周部の黒皮と呼ばれる表層は、素材密度や硬度が完全に均一では無いのですが、そこから設計値分を粗削りした際に均一な安定層が出て来るかをチェックします。
引き目がむらなく安定していれば、良い状態である事がわかります。
これは別の素材ですが参考迄に。
素材の硬度や密度にむらがある場合、同じ速度や回転数で刃物を当てて切削してもこの様な引き目の差が現れます。
又、粗削りして円筒にした素材に縦のスリットを入れます。
実はこれは鋳造素材の硬度のばらつきや応力が残っていないかを確認する為です。
鋳造後の応力が残っていると、このスリットの幅のどちらかが広くなったり、場合によっては密着してしまったりします。
そういった素材をスリーブに使用すると、どんなに精密に加工しても、シリンダーブロックへの圧入後に精密なボーリングやホーニングを施しても、加熱と冷却を繰り返す事で応力が解放されて歪みが出てきてしまいます。
ESTシリンダースリーブの製作素材に関しては、鋳造ロットの中からこの様な抜き取り検査を行った上で、更に素材の寝かし期間を設ける事で応力抜きを行ってから加工を行っています。
シリンダースリーブの素材として、鋳鉄は硬さと耐摩耗性に強度のバランスが取れたものです。
硬ければ良いというわけでは無く、オイルの保持や炭素を含んだ組織そのものが持つ滑り特性による耐摩耗性が非常に重要です。
表面の硬さのみに依存すると、ピストンリングとの相性も非常に悪くなりますが、ESTシリンダースリーブの耐久性は実績のあるバランスの上に成り立っています。