弊社のテスト車両である、インジェクション仕様Z1000J。
純粋にピストンのみの組み込みでどの程度変わるかのトライを行う為、弊社取り扱いのPistal Racing 社製72mmピストンを組み込みました。
ちなみにZ1000Jシリーズ用としては、72mm,74mm,そして76mm。更にOEM用として77mmや78mmの大口径のものもラインナップされています。
これをあえて72mmとしたのは、このサイズがZ1000JやZ1000Rの純正シリンダーブロックにボーリングのみで組み込み可能な、一般ユーザーにとっても最も身近なサイズであろう事が理由です。
又、Z1000J,Rのボアアップ版純正インジェクション車であるZ1100GPの72.5mmにも近いボアである事から、ピストンの設計年次による違いがどの程度あるかも比較出来るかと思います。
さて、公正さを保つ為にピストン換装前の車両は完調にしています。
故障レベルな迄に消耗したり吸排気系が不調なエンジンのオーバーホールと同時にピストンをインストールした結果大幅にパワーアップしたとしても数値の比較としてはフェアではありません。それではどの部分がピストンの違いによるものか判らなくなります。
従ってベースにするエンジンは0.5mmオーバーサイズのピストンにてオーバーホール後1万kmを走行した絶好調のものを更にセッティングを煮詰めて計測、直後にピストンの換装を行いました。
その際の作業としては、純粋にシリンダーヘッドを取り外してボーリング済みのシリンダーブロックとピストンを組み込んだのみです。
ヘッド自体には一切手は付けずシートリングの当たり修正等も無し、バルブスプリングやカムもそのままでバルブタイミングも同じでシム調整も行いませんでした。
ガスケットは交換しましたが、その他の消耗部品のエンジンオイルやイグニッションプラグもそのまま使っています。
組み込み以降慣らし運転を行っておりましたが、先日それも終了。
全開域の空燃比と、点火時期のみはピストン仕様に合わせてセッティング後、シャーシダイナモにて測定してみました。
換装前のSTDピストン時のスペックが104.61ps 8.48㎏-m
Pistal Racing ピストンの組み込み後は117.94ps 9.83kg-m です。
ピストン交換前後の差は13.33ps 1.35㎏-m 。
排気量の拡大分が7.7%のところ、パワーで12.4%,トルクは15.9%増えた事になります。
出力値は、シャーシダイナモのメーカーやマシンの個体差が大きい為、最高値それそのものを比較するのは正しくはありませんが、(それでも弊社の機械は結構辛い数値を出す方です)今回の実験では同じマシンを使用して測定しております事と、特にアップ分の数値については信憑性を持たせられるかと思います。
又、あくまで参考値となりますが、ノーマルオーバーホールを施してセッティング状態の良好なZ1100GPを弊社にて何度か測定した平均値としては、後輪実測100~103ps 9.1~9.2㎏-mといったところです。
排気量はZ1100GPが1089㏄、今回のエンジンが1075㏄と僅かに小さいのですがパワー、トルク共に上回っています。
もちろんアクセル全開での測定を行うシャーシダイナモの数値のみでバイクの速さを語るのはナンセンスなのですが、実際に乗り比べるとこの差分は圧倒的な差となって体感出来ました。
特に、ライダーが体感できるトルクの差は顕著で、流していても加速に入ってもわかります。
更に、ガスケットを変更して圧縮を上げたり、更にハイスペックなカムシャフトを導入してセッティングを詰めていけばその差は更に大きくなると思われますので、段階を追って実験を継続します。
ユーザーさんにも数値としてどの様にすればどう変わるかの指標にもなるかと思います。