以前、バルブスプリングを長年使用し続けたものは、スプリング全体が短くなる方向に変形する為、それが為にシリンダーヘッドに組付けた状態のバルブがシートリングに押し付けられる荷重(セット荷重)が低下してしまうと、記事にしました。
これは、ある意味使用によるバルブスプリングの経年劣化によるものなのですが、それ以外にもオーバーホールを重ねる内にシートリングのカットを繰り返したり、流用のバルブを使った際に、バルブが燃焼室面に対して沈む事でセット荷重が低下する事があります。
バルブが沈むという事は、ヘッド側のバルブスプリンのあるタペット側でのバルブステムはその分長く突き出します。
そうなるとスプリングを抑えるリテーナーを保持する為のコッター溝の位置も高くなり、その分バルブスプリングの初期圧縮長さは増えますから、バルブにかかるセット荷重は低下する事になります。
それではどの程度下がるかです。
下の写真は、マニュアル上の新品時を再現した場合。
バルブ突き出し長を37.2mmとして、セット荷重を測っています。
バルブの上に2.0mmのインナーシムを置いていますので、39.2㎜と表示されています。
この際の荷重は32㎏でした。
32.0㎏がセット荷重という事になります。
これが例えばバルブのシートカットを何度か繰り返したと仮定して、0.8mm増やした40.00mmになる様にした場合。
たった0.8mm、組み込みじのスプリングの押し幅が多くなるだけで4.0kgも低下してしまいました。
セット荷重はエンジンの設定上非常に大事です。
これが小さくなると特にバルブが閉じる際にシートリングに対して跳ねてしまい、パワーダウンの原因にもなってしまいます。
一度位のシートカットでは0.8mmも沈む事はありませんが、Z系エンジンは既に何度かオーバーホールされているものも増えており、又はチューニング等でバルブを沈ませる様にシートカットするとこれ位の数値は充分にあり得るケースです。
こういった場合は一般的にはスプリングシートの下に写真の様なシムを入れて調整します。
増えてしまったスプリングの組み立て幅を相対的に減らして、その分荷重をかける為です。
ちなみに、Z系ではマニュアルにもこのシムの事には書いてありませんし、純正でも存在はしないのですが、4輪車では純正で調整を指定されている車両も多いです。
この為、Z系チューニングエンジンを製作される場合は同様にシムを使うチューナーも多いです。
0.8mmのシムを入れる事で、バルブが沈んだ状態でも新品時と同様に32.0㎏のセット荷重となりました。
ところで、以前はこういったエンジンを組む際には、海外で市販されている汎用シムを使用していたのですが、Z専用品では無い為に内外径のサイズに微妙なで、かつ表示と厚さが微妙に違っていたり、外周部にバリがある為に気を使う様な事があった為、最近は日本国内で専用に切ってもらったものを使っています。