エンジンコントロールの為に燃調や点火時期を制御するのに、エンジンの暖機状態を検知するには水冷エンジンの場合は冷却水の温度で判断するのが普通です。
これは、シリンダーヘッドの燃焼室を囲む様に水路がある事と、水が主成分のラジエター液は熱の吸収が非常に良く、エンジンの温度を知るにも都合が良い為です。
Z系の様な空冷エンジンの場合、水でなければオイル温度と言う考え方もあるかも知れませんが、実は始動後の燃焼室廻りの温度上昇に対してエンジンオイルの温度上昇は非常に緩慢な為、特に始動後の暖機状態を知るにはレスポンスの意味ではあまり適していないとも言えます。
空冷エンジンの暖機特性
この為、空冷Z系が純正で採用していたZ1100GPやGPz1100の純正インジェクション(DFI)でも、暖機判定はシリンダーヘッド燃焼室付近のポート側にヘッド温度センサーが装着されていました。
又、4輪でも、空冷エンジン時代のポルシェ911は同様にシリンダーヘッドに温度センサーが装備されています。
さて、これは弊社で用意していますZ系エンジンのフルコン制御用シリンダーヘッド温度センサーセットです。
フルコン配線の製作を行い易い様にするのと同時にエンジンの整備時にはエンジン側にセンサーを残して切り離す必要がある為、防水コネクターをセットにしています。
この写真のセットで税込み¥4,620(税別¥4,200)です。(2022年8月時点)
このヘッド温度センサーは、シリンダーヘッドに直接ねじ込みか、イグニッションプラグ座面に入れるアダプターを使用するかの方法で取り付けしています。
ヘッド温度センサー追加
ヘッド温度センサーアダプター
ちなみに温度センサーは、水温とシリンダーヘッドでは温度レンジが異なります。
冷却水温度は120℃もあれば充分ですが、空冷エンジンのシリンダーヘッド温度は走行直後の車両停止では180℃を超える事もありますので水冷用専用のセンサーは空冷エンジンには適さず、それに応じたレンジ幅の物が望ましいです。
こちらは、一般的な水冷エンジン用のセンサー特性。
最大で130℃プラス程度です。通常これを超える水温になったら既にオーバーヒート状態と言えますので、レンジ的にはこれで充分です。
こちらは、弊社で空冷エンジン用に使用している上の写真のセンサーの特性です。
氷点下から180℃近く迄、幅広く測定出来ている事がわかります。
シリンダーヘッド温度を測定してどの様な制御を行うかと言えば、まずは始動時にエンジンが冷えているか暖まっているかです。
冷間始動であれば、キャブレターのチョークの様にクランキング時の初爆が発生する迄の間は特に多くのガスを噴射し、その後ヘッド温度が上がる迄の間は増量補正を行います。
又、点火時期については始動時のみは点火時期を遅くして初爆をスムーズに行い、火が入った後はストール防止の為に点火時期を早目に補正し、暖まって安定するに従い遅くする様にします。
ちなみに当方のやり方としては、完全に暖まってからアイドル回転数が上がり気味になりそうな場合はその領域のみ点火時期を遅らせてやると低く安定し易くなります。
こうしてやると、4輪の様にアイドルバルブコントロールシステム等を使用しなくともある程度はアイドリングをコントロール出来る為、システムは簡素に出来ます。
この為、弊社のインジェクションZ1000Jでは、始動時から走行中迄を含めてアイドル調整用のスクリューを触る事がまずありません。