約11mmリフトのカムシャフト(インチ表示だと435等と呼ばれます)を使用するのに、ノーマルのヘッドのままで可能かどうかのお問い合わせを受けました。
経験のみでのお話では無く、シミュレーションしてみます。
バルブガイドの高さがノーマルとして、バルブステムの突き出し長はヘッドやバルブが新品時と同じ高さとし純正のステムシールを使用。
その状態から11mmリフトさせた場合のリテーナーとステムシールとの間隔は写真の通りとなります。
この通り非常に近いと言うか、既に当たるかどうか紙一重のレベルです。
実際にはバルブクリアランス0.2mm程度間隔は増えますが、新品時からのシリンダーヘッドでもバルブガイドの圧入高さは個体差もありますので、タッチしてしまう可能性もあるでしょう。
運良く個体差でタッチしないにしても、ここまで近いとステムシールのオイルリップに対してリテーナーがオイルを押し込む様に作用しますので、必要以上にオイル消費が増加する可能性もあります。
又、社外品のオイルシールには純正より高さのあるものもありますので、そういったものを使用するとリテーナーが接触してシールリップを破損する可能性が大となります。
従って、若干背の低いバルブガイドへの交換か、リテーナー位置を若干上になる様にしてやる等の調整をしなければ11mmリフトのカムを安全に使用するのは難しいかと我々は考えます。
さて、10mmリフトであればどうかとなります。
僅か1mm少なくなるだけですが、問題無く使えるレベルのクリアランスが取れます。
例えばですが、再販されたカワサキZ1用のシリンダーヘッドをそのまま使用するのであれば、カムシャフトは10mm程度(395と呼ばれる事もあります)迄となるかと思います。
又、リフトの高いカムシャフトを使用する場合、スプリングの線間密着による折損等にも注意する必要があります。
ちなみに弊社のESバルブスプリング タイプSであれば、線断面を卵型にしている事と現代素材を使用する事による巻きピッチで製作してあります為、11mmリフトでも充分に余裕をもって使用が可能です。