以前記事にした内容で、昨今二輪用として販売されているリチウムタイプのバッテリーは始動放電できる電力は小型の割に高いものの、蓄電できている電力量そのものは1/3程度であるという記事があります。
http://www.pams-japan.com/diary/?p=23742
これは、始動出来てさえしまえばストリート用の車両の場合はジェネレーターを備えており、運転中にはそこから電力が供給される為実容量の少なさは問題にならないという意味です。
ただ、エンジンを始動する迄のスターターモーターを回す為の電力はバッテリーに依存しますので、例えばどの程度の時間や回数をスターターモーターを回せるのかという話になりますので、少し実験してみます。
実験車はこういった場合に必ず使われる弊社のZ1000Jです。
インジェクション車で消費電力が多い上に、圧縮圧力が14㎏f/㎝のチューニングエンジンとなっています為、通常のZ系よりスターター時の消費電力は割と高目です。
車体側のバッテリーを切り離して、SHORAI社のZ用バッテリーでは小型のLFX-14L2のみを実験用に接続しています。この時点でこのバッテリーは満充電状態にして1日程置いてあるものです。
同時に、スターター時のモーターに流れる電流量を測定する為、クランプタイプの電流計を使いました。
この状態で、スターターモーターを3〜4秒間回し、始動したらすぐにエンジンを切っては再始動。
これを何度繰り返せばバッテリーの電圧や容量がクランキングに影響が出る程ダウンするかをチェックします。
エンジンが始動してもジェネレーターからの充電量を最小限にする為、運転時間は長くても20秒程度にしてやります。
初回のクランキング時電流はDC145.0A(アンペア)となりました。
直後エンジンを切っては再始動を続けましたが、実容量の最も少ないタイプのこのバッテリーでも20回繰り返してもバッテリー電圧やスターター回転の勢いが落ちる事がありませんでした。
20回スタートを繰り返した後のバッテリーの各セルの状態を確認しましたが、内部容量こそもちろん減ってはいるものの、更に普通に始動出来るだけの容量が残っています。
ちなみに、最後にスターターを回した際に流れた電流はDC167.6Aと増えています。これは、始動を繰り返してエンジンが暖まる事でピストンリング回りのクリアランスが詰まって、実効圧縮が上がったが為でしょう。
その状態の方がモーターの負荷は大きくなりますので。
又、このサイズのSHORAIバッテリーの始動時最大電流は210Aとされていますので、まだ余裕はありました。
以上の結果から考えれば、ジェネレーターが正常でスタート時にバッテリーが満充電に近く、点火システムや空燃比に余程の不調が無い限り、この容量のバッテリーでも始動させるまでには結構余裕がある事になります。
逆に、クランキングを数秒数回繰り返しただけで回転が非常に遅くなったりなかなか初爆が起きないという事であれば、むしろ車体側の整備が必要ではないかとも言えますね。