まず、オートバイ用のステムベアリングは1980年代よりのある期間、耐久性重視でニードルローラーを使用するテーパーローラータイプが主流になった事があり、Z系のアフターマーケット品もそれに従った時代が長かったのですが、ボールベアリングによるフリクションの少なさによる自然なハンドリングや調整の簡易さが見直されて、現行のストリートマシンの殆どはボールベアリングを使用しています。
この為、弊社でも車両整備時や販売用部品としてはボールベアリングのセットを用意しています。
さて、これは弊社製品ではなく、海外で販売されているアフターマーケット品のリテーナー付きステムベアリングです。
組付け対象車両として指定されているのは、昨今に至る迄のkawasakiの中小排気量車がメインとなっている様です。
メジャーな例では、ツインエンジンを搭載するNinja400(2018年型迄)等と同等年代の他の車両となりますが、実はそれらの車両の純正ステムベアリングは第一世代のZ系、1972年のZ1,Z2〜1980年のZ1000Mk2やZ1-R等のものと同じものが使われています。
と言うより、当時にZ系用として使った大型車用のステムベアリングを、更に小型の車両用として転用し、それを現代に至る迄使用していると言った方が正しいです。
従ってこちらの製品はZ系にも組み込みが可能であると対象車種の一覧には記載されている様ですので、どの様な物かテストの為に、取り寄せしてみました。
ベアリングをリテーナー保持した場合のメリットは少なからずありますし、スペックや仕様的に私達がZ系に求めているレベルにしっかりと達しているか超えているものであれば、弊社でも取り扱いもありかと考えた為です。
まず、現物サイズを測定してみましたが、そこは問題はありません。
Z系にも使われているステムベアリングは、実はmm単位丁度では無く、例えばロアー側アウターレースの外径は53.02〜53.04mmとなっています。0.02〜0.04mmが締め代として設定されているのでしょうが、この寸法に関してはこちらのアフターマーケット品でもしっかり同寸となっています。
ボールベアリングの軌道面の加工仕上げに関しても良好で、表面を拡大しても純正の物とのレベル差は無い様に見えます。
さて、使用されているボールのサイズは同じものですが、隙間無く並べる純正に対して保持器であるリテーナーに入れるとどうしてもスペース的に組み込み可能な数は減少します。
ステムベアリングはその構造上アッパー側はほぼ位置決めとしての機能が主で、そこに荷重は非常に低いです。
その為上側の個数の減少はそれ程大きな問題にはなりませんが、その逆に車重や走行中の路面からのショックやブレーキング時に増大する負荷はその多くをロアー側で受ける事構造になっています。
そのロアー側の純正のボール数が20個となっているのに対して16個となっています。
これでも荷重に耐えるのであれば、フリクション的にも有利になりメリットがあるでしょう。
但し、その為には少なからず純正のレースよりも耐久性がある事が必要になります。
寸法的に同じであれば、ボールの接触面積あたりにかかる荷重は1.25倍になっているわけですので。
続いて、目視や寸法では測れないレース側の硬度や強度のテストを行いましょう。