J系のヘッドカバーは、センター部分にカムチェーンのガイドがあります。
運転中のエンジンのカムチェーンは、遠心力で外周方向に向かって広がろうとします。
この力は回転が上がれば上がる程大きくなります為、年数の経ったJ系エンジンのヘッドカバーはそれによりクラックが入る場合もある程です。
ちなみに、このクラックについてはカワサキも認識していた様で、年式によっては写真の様にカバー外側に補強リブが設けられているものもあります。
この為、J系ヘッドカバーガスケットは純正でもZ系用のそれがオイル漏れ対策の為、柔軟性をもたせる為に1〜1.5mm厚さになっている事に対してかなり薄手に作られており、新品状態でも約0.5〜0.6mmのシートで、更に後期のものはカーボングラファイトで芯材にはスチールが使用されています。
オイル漏れに対する耐性を持たせながら剛性を保とうとしたものと思われますが、それでもカーボングラファイトのガスケットの柔らかさ故か、特に初期のカバーに関してはやはりクラックが発生する場合がある様です。
この為、例えば純正より厚手にして柔軟性を持たせてオイル漏れ対策にしてやるという様な方法は使えません。
それをすると、柔らかいガスケットの上に乗ったカバーは運転中にカムチェーンによる負荷で歪みが大きくなってしまうでしょう。
又、必要以上に厚くしたガスケットは、締め付けした際のトルクの立ち上がり感が悪くなり、実は作業性が良く無かったりします。
そこで弊社のJ系カバーガスケットの場合は、ボルトを締め込んでカバーを固定した際にはしっかりと剛性を保ちながらシールの出来る厚さのものを何種類か試作して、それを交換しながらテストしています。
これら数枚のテスト用は、一つ一つがカットの手法やカット後に馴染ませる為のプレス圧力とそしてゴム層の厚さが異なっています。
確実にカムチェーンをガイドしながら高回転域でのカバー歪みを抑え、更に数回脱着してもオイルを漏らさせずに再利用可能な程度を探っています。