Z1系のシリンダーヘッドに純正より最大リフトの高いハイカムを組んだ場合、カム先端の両サイド軌道がバルブリフターホールの外周に非常に近くなり、場合によっては干渉する事もあります。
ちなみに、この写真は紙一重で干渉していない例です。
ではどの位のリフト高さのカムであれば大丈夫かとたまに質問されるのですが、実はアフターマーケットのカムシャフトの中には軸に対するカム山の位置に加工のばらつきがある場合も多数ある事。
そして、シリンダーヘッド側のリフターホール周辺の鋳造厚さや位置そのものにも公差内での振れは存在します。この為あるヘッドでは問題無かった場合でも個体が変わると干渉したと言う様な例もありますので、多少マージンを持っておく事を推奨します。
ちなみに、リフトで10mm位迄のカムであれば干渉するのはリフターホールの最も近くなる部分をほんの少しですので、シリンダーヘッドを分解してある場合はその部分をほんのかすかに削るのみでクリアは出来ます。
ただ、搭載状態無加工のシリンダーヘッドにそのまま組める高さとすると、当方の経験上ほぼ問題無いリフト高さは9.3mm弱の、輸入品では365(0.365インチ)と呼ばれるカム迄になります。
それを越えて9.5mmを超える様になると、カム山先端がリフター外周に微かに触れてしまうものが出て来ます。カタログ諸元でインテーク側が9.5mmとなっているヨシムラさんのST1カムを装着する場合でも、カムとヘッドのどちらの個体差なのかはわかりませんが、角が当たってしまった車両は何度も経験しています。
ちなみに、上の写真のヘッドとカムは最近カワサキから再販されていたZ1用の新品シリンダーヘッドと、弊社で試作している通称スポーツカムの組み合わせです。
リフターホールに対して左右でクリアランスが異なるのは、運転中にバルブリフターやシムを回転させるのに、コンマ数mmmですがカムセンターをリフターセンターから横にずらしている為です。
このカムは最大リフト9.8mmとなっているのですが干渉しませんでした。新品のヘッドで当時の物とは鋳型が異なっていたり、
加工精度が高くなっている為かと思い、他にもいくつかの中古ヘッドでも試しましたところ、何機かは特に干渉する事も無く回ったものがありましたので、このリフトでも干渉しないものもある様です。
どちらにしてもシリンダーヘッドにも個体差は結構ありますので、Z1系エンジンに9.3mmを超えるカムを組む場合は必ず実機にて確認しながら組まれる事を推奨します。
ネット上等で情報が錯綜する現代ですが「〜と〜の組み合わせは問題無く組めた」と言う情報もたまたまであった場合もあります。
必ずしも全て通じるわけでは無い場合もありますので真に受けてしまうと、思わずエンジンを壊してしまう様な可能性もありますのでご注意下さい。