長年使用している車両の電装系ではハーネス自体も消耗します。
目に見えて摩耗している様には見えませんし変化は徐々に起きますので、なかなか体感は出来ないのですが、限度を超えたところで突然機能しなくなるのが電装系です。
メインハーネスそのものではなく、その一部のサンプルとして。
これはASウオタニフルパワーキットZ系用の配線一式です。
入庫整備車両から取り外したものですが、ユーザーさん側で取り付けされたのは10年前程、この3年程は乗られていなかったらしいので、実使用期間は7年程だそうです。
配線を通す被膜も硬化当しているわけではなく普通に使えていたものですが、大きな電流が流れる部分を中心にチェックしてみましょう。
ちなみに、車両配線の経年劣化で問題が起きる場合はまず導線のカシメ部分、端子同士の接触しているところです。
外気に触れている事と、配線の銅や端子側の真鍮やそのメッキで接触導通している部分は配線そのものより抵抗大きい為、ここがボトルネックになって発熱したり酸化腐食を起こします。これは、流れる電力(電圧×電流)が大きい程顕著になります。
そこで、点火系の場合に最も大きな電流の流れるイグナイターユニットのアースと、コイルの電源を取る端子の部分を見てみます。
この車両のアース部分の端子にはそれほどの痛みや焼けは見られませんでした。
端子カシメ部分は正直それ程綺麗ではありませんが、圧着圧はしっかりかけてありましたのでそれが良かったのでは無いでしょうか。
又、熱収縮チューブがセットに付属の物でなく、熱を加える事で内側のチューブから溶け出してシールするタイプのものを使用されてありましたので、外気に触れていなかった事もあるでしょう。
さて、イグニッションコイル電源の取り込み部分です。
この部分の端子は、ウオタニさんの方のファクトリー側でカシメられていますが、導線部分は外気に触れ続けている事と、イグニッションコイルで強力なスパークを発生させる為に割と大きな電流が流れています。
その為か導線のカシメている部分の表面には焼けが見られる様です。
もちろんこれで即時断線の様な症状が起きるレベルではありませんが、ここからは徐々に酸化による抵抗値の増大とそれによる発熱が発生して、進行していくでしょう。
この端子のある部分はエンジンの上方にあたりますので、その場所の雰囲気温度が割と高めな場所にある事も影響します。
カシメ部分でこういった焼けが集中する事を証明するのに、配線をカットして被膜で覆われていた部分を剥いてみました。
コードを折り曲げて重ねると、繋がっている導線でも左のカシメ部分が明らかに焼けている事がわかります。右の部分はまだ新品の銅表面のままですね。
以上の様に車両の配線劣化はカシメ部分や端子部分で発生します。
ある程度の年数が経ったら、一新してやる事を考慮した方が良いかと思います。
使用している車両であればおおよそ10年程度を目安としてください。
もちろんそれ以上使えているものは大半ではあるのですが、確実に導通性能は低下していますので。