お盆休み中は台風の影響で西日本方面を中心に天気が荒れ、思う様にお休みのスケジュールを進められなかった人も多かったと聞きます。
弊社のある関東方面も昨今に無い程天候は安定せず、朝に青空かと思えば昼過ぎにはバラバラ雨が降る様な状態の為、バイクでちょっとお出かけも控えるしか無かったりしました。
自身が濡れるならまだしも、メカニックとしての立場ではクラシックバイクで雨中走行すると、後の掃除や各部のメンテナンスが大変面倒な事を知っているが故なのですが。
そんな状況の中ですので、雲が晴れた合間のみ、近場を散歩する様に時々乗りながらアイドル域やその他のデータ採りや微調整をしていました。
さて、インジェクションのイメージとして多いのは、春夏秋冬暑かろうが寒かろうが何時でも同じようにエンジンがかかり調子良く走れるというものだと思われがちです。
但しそれは純正インジェクション化されたメーカーの市販車がECUに様々な条件や状況に対応する為の設定や数値をしっかり教え込んである為で、逆にそれらが正しく行われていないインジェクションは、環境が変われば対応出来ません。
季節によっては始動性が悪化したり空燃比がずれたりと、アイドリングにしても始動時に調整スクリューを締め込んで始動後は開け、暖機後には回転が上がるので又締めて下げるみたいなアナログな操作が必用になったりとよく言ってもキャブレター車と然程変わりはしません。
実際のところ、インジェクションのハードが組み上がった状態でキャブレタ―車レベルに走れるというところまでであればマップの調整やセッティングはそれ程時間のかかる事はありません。
それ以上を求めるとどこまでも煮詰めて行けるというところがインジェクション化の特徴であり魅力である部分でもあります。
軽く暖機した後の再始動。
シリンダーヘッドはほんのり暖まっていますが、油温は正直今時の気温と変わらない程度の状態。
始動時に行う増量補正や始動直後の点火時期進角を完全冷間時に比較して抑えめにして、1,000rpm前後に安定させています。
すぐにキルスイッチで切って再始動をかけているのは、始動時補正が邪魔にならない事を確認する為です。
ちなみに、このZ1000J。
始動してから暖機、走行を繰り返し帰還する迄に丸一日でもスロットルボディのアイドルスクリューを触る必要はまず無いレベル迄仕上げています。
これがレーサーであればこの領域はそれ程気にする必要はありませんが、ストリート車の場合は大変重要な部分でもあります。
そしてそこの部分だけを仕上げるにはそこそこ時間はかかっています。
ただ、そういった調整や煮詰めを含めて調子がよく出来る事を楽しめる様な人には大変向いています。
又、キャブレターの場合はどんなにセッティングを煮詰めても外気温の違いで吸い込む空気の密度が変われば空燃比は変わります。
今の季節であれば冬に比べてタウンユースでの吸気温度が40℃近くも高くなるのはざらですが、キャブレターの場合セッティングを変えなければ走れなくなるほどでは無かったにしてもかなり空燃比は濃くなります。
春先や冬は調子良かったのに、夏場のストリートでプラグが燻ぶり気味になった経験のある人は多いでしょう。
但し、インジェクションの場合に吸気温度を補正パラメーターとして制御してやると、暑い状況では燃料を絞って補正してやる事が出来ます。
実際上のJも、春先に作った燃料マップに対して夏場の吸気温度のデータを採りながら燃料の絞り幅を調整しています。
そうしてやる事で必要以上の燃料をエンジン内に投入しません。カーボン蓄積や燃費低下にブローバイガスに含まれるガソリンでのエンジンオイル希釈も防止できます。
現行車の純正インジェクション車でも大抵のものはエアクリーナーボックス周辺に吸気温度センサーを装備して同様の制御を行っていますので、実際にキャブレター時代の車両よりエンジン自体の寿命が延びている一因となっていますね。