インジェクション化の為、入庫したFX-1のシステムを組み立てて行きます。
さて、Z系の様なキャブレター車の場合、当然ですがインジェクション化に必要な燃料系や電気的な制御系が装備されていません。
燃料系のみでも現行車の様に一体型のフューエルポンプを燃料タンクの中に設置する事が出来ればかなり楽なのですが、Z系の純正フューエルタンクは底部の形状の都合上、加工してポンプを組み込みするには非常に難易度が高い為、フレームやタンクがワンオフ製作されている様な特別な例を除いてはインライン方式と呼ばれる外装式フューエルポンプやプレッシャーレギュレーターを装着せねばなりません。
更にこれは弊社での手法なのですが、ポンプとインジェクターの間には4輪のインジェクションシステム同様に必ずフューエルフィルタ―を置いて、ポンプ内で発生する内部パーツの摩耗剥離粉がインジェクタ―を詰まらせる様なトラブルを防止しています。
又、このフィルタ―はインジェクターの開弁噴射時に発生する瞬間的な燃圧の低下を防止して安定させる為のサージタンクとしての機能も考慮しています。
これらの必要部品を1ユニットにして汎用品化してしまえば割と楽なのですが、インジェクション化を依頼していただける様なお客様の車両は、フレーム自体を含めて車体のレイアウトがフルノーマルである場合が殆ど無い為、実際にはほぼ毎回ワンオフ品になっているのが現状だったりします。
今回のFX-1の場合は、エンジン後部にフレームパイプをブリッジする様に補強が入っている事と、更にツインプラグである為、追加で必要なイグニッションコイル2個もマウント方法を考える必要があります。
少ないスペースではあるのですが、整備時に取り外したり分解する事を考えながら組んでいきます。
ちなみに、レイアウトに使用しているボードやステーの一部は、今回はドライカーボン(CFRP)プレートをダイヤモンドソーで切り出して使用しています。アルミよりもずっと軽く厚紙の様な重さであるのに、同じ厚さの鉄板より10倍もの引張強度を持つ為、コスト高ではあっても機能面では非常に秀逸な素材です。
ちなみに、このマッチ棒の様な重さと太さの端切れでも、指先位の力では容易に曲げる事は出来ないレベルの硬さです。
ドライカーボンはクラシックバイクの見える部分に使うと、コンセプトによっては違和感が出てしまう場合もある素材ではありますが、この車両の場合は割と機能に振った作り方をされていますので取り入れています。
この様な使用方法をしても振動減衰特性に優れ、金属に比較してクラック等は発生し難いのも特徴です。