ピストンヘッドを含む燃焼室内の点検の為にシリンダーヘッドを取り外したZです。
カーボンを拭き取り清掃したピストン上面も異常はありません。
ちなみに、今回はシリンダーブロックを抜きませんので、浮き上がりを防ぐ為にアダプターカラーにて抑えて作業しています。
さて、Z系のシリンダーヘッドを取り外した際に確認したいところは、圧入されているシリンダースリーブの外周部分と、年式によっては存在するブロック上面の1番2番と3番4番の各々の間にある窪みにオイルが回っていないかです。
本来この部分にはオイルラインはありませんので、それらの部分にオイルの気がある場合は、シリンダースリーブとブロックの圧入クリアランスが長年の膨張収縮を繰り返す事で大きくなって緩んで来ている証拠となるからです。
特にスリーブの外周ラインに例えば油取り紙等を当ててみて、オイルが染み込む様であれば、その可能性は高いです。
このエンジンに関しては、以前に74mmピストン化する際にスリーブを交換している為、その様な兆候はありませんでした。
もちろんアルミブロックに鋳鉄スリーブであったとしても、ストリートで問題になる程緩んでしまう迄には当方の経験的に少なくとも20〜25年程度はかかるのが普通ですが、50年近くが経過したオリジナルのままのブロックの場合はそれなりになっているものも多く、例えばブロックを抜き取ってスリーブを押しても動かない様な個体でも、X軸は絞まっていてY軸方向は大きく緩んでいるケースもあります。
例えば、このセンターシールの溝とスリーブの外周が重なっている部分ですが、緩んだ外周からオイルが上がって来るとセンターシールの外から湧いてしまう事になりますので、ガスケットやシールを新品に交換して組み直してもセンターからのオイル滲みは止まりません。
この為、Z系はオイル漏れの対策にセンターシールの収まる溝部分に液体ガスケットを詰め込んで組んでやるべきと誤解されたユーザーも多かった様ですが、それでたまたまオイルが止まったとしてもスリーブ緩みによる性能や冷却効率の低下は避けられませんので、スリーブ外周にオイル付着が見られた場合は、対処が必要になるかと思います。
弊社で純正サイズのスリーブに、埋め込み部の直径が0.5mm大きくなっているオーバーサイズスリーブ64-OS,66-OS,70-OSを用意したのはこの為です。
http://pamswebshop.my-store.jp/shopdetail/000000000048/ct42/page1/recommend/
適切に加工して組み込んでやれば、新車当時程のペースでZの距離を延ばすユーザーさんはそれ程多くは無いかと思いますので、今後数十年間は緩みを気にする必要は無くなる事でしょう。