Z1系から始まりGPz1100やZ1100Rに至る迄のシリーズでは、年式が進むにつれて最大出力トルク共に向上し、その中でもカムシャフトのリフトや作用角を含むスペックはより大きなものとなっています。
そこで意外に一般の方からは誤解されている事が多いのは、そこで使用されているバルブスプリングの固さについて。
後半になるにつれてパワーが上がっているのだから、バルブスプリングも強化の名の通り固くなっており、同じリフト量でもその分強い力で荷重をかけているというイメージを持たれる人の方が多いのではないでしょうか?
ところが、パワーが出るカム=ハイリフトだからと言って必ずしもその分固いスプリングや強い力での反力が必要と言う様な単純なものでは無く、バルブスプリングの荷重設定はカムによるバルブのリフトコントロール時に確実に追従出来るものである事が正しい設計です。
この為、少なくともZ1〜GPz1100に至る迄のバルブスプリングは、実は年式が進むにつれてスプリングそのものとしては同じリフト量で比較すると荷重は下がっています。
下記の図は、20年近くも前に各年式の新品時荷重を測定したものです。
測定は、実際にエンジンに組み込んだ際の条件と同じにして、1mmずつリフト量を増やして測っています。
注目すべきは、バルブが閉じている際にかかっている荷重は年式問わずほぼ同じで、32〜33㎏。
そして、例えば10mmリフトした際の荷重はモデルが進むにつれて下がっている事です。
さて、同じ図面に各年式の純正IN側カムの最大リフト量のあるあたりをマーキングしてみます。
ちなみに、Z1 8.2mm Z1000R 8.8mm GPz1100 9.8mm となっています。
赤いマーキングをしたあたりの荷重を読み取ると凡そ85〜88㎏となり、カムシャフトの最大リフト量は増えても、最大荷重はほぼ同じであったという事になります。
上記の通り、バルブスプリングの荷重設定はリフトされるバルブの加速減速の変化に追従し、又閉じた際にシートリングに確実に密着させると言ったコントロールを行えるだけのものが望まれます。
純正のバルブスプリングはそれを満たせる設定になっているわけですが、パワーが上がっている=固いスプリングが入っているという概念が必ずしも正しい事では無いとご理解いただけるかと思います。
PS:純正のバルブスプリングは製造された時代の素材レベルもあるのですが、数千km〜1万km程走ると自由長が若干縮みます。この為、上の図面の荷重より数%から10%程度低下する傾向がありますが、おそらくは当時の設計はそれを見越して行われているものと思われます。
あたりのついたZ1〜GPz1100のSTD車で測定すると、年式問わずバルブセット荷重は30㎏、最大リフト荷重は80〜85㎏程度となっています。