以前に記載させていただいた事もありますが、SHORAIバッテリーを含むオートバイ用のリチウム系バッテリー(ポリマー系より安全度の高いフェライト系が通常です)は、当該車両に使用される電解液タイプの化学系バッテリーより実容量が1/3〜1/2と小さくなっているのが普通です。
例えば、Z系の場合の純正タイプのバッテリーは14Ahと呼ばれるサイズで、これは14Aの電流を1時間放電出来る容量というわけですが、下の写真の通り推奨バッテリーのLFX14の実容量はラベル左側に記載のある4,000mAh=4Ahで、容量としては約30パーセントです。
さて、バッテリーの保護回路についてですが、特に最近のロットでは内部回路がアップデートされたと聞いています。
リチウム系の様な固体電池の場合、過放電や過充電は内部セルを極端に劣化させます。
例えばスマートフォンの電池では、セルに電力が残っていても容量が一定以下になった時点で自らシャットダウンを行いますが、ある時期のものからこれと同じ様な機能をバッテリー本体の内部回路に装備したと聞いています。
もちろんエネルギー密度の高いリチウムバッテリーの場合、このサイズでもスターター使用には通常バッテリーを上回るレベルで一気に放電が出来ますのと、適正充電時には連続20回以上スターターモーターを回す容量があります。
又、始動後にはエンジンに備わっているジェネレーターから必要な電力は供給され続けますので、容量が少ない事が実用上問題になる事はありません。
ただ、内部に蓄えられている電力総量自体は小さい為、エンジンを始動する事無く連続で放電をさせると従来のバッテリーよりは早く無くなります。
車両整備の為に通電させた程度では問題はありませんが、数週間〜月単位動かさない車両でセキュリティを作動させたままの場合はバッテリー上がり可能性があります。
又、これは整備上の間違いなのですが、ETCの電源をアクセサリーやイグニッション等のキーオンで電気が流れるところでは無くバッテリーから直結で取られているケースがある様です。ETCは電源が入っている限り通信を試みようとしますので、電力を消費します。その場合通常バッテリーなら数日は問題無かったものが、リチウムバッテリーに変えたらバッテリーが上がる様になったと言う様なケースを何度か報告を受けています。
さて、バッテリーの保護についてです。
例えば、このバッテリーは充電回路の不調で内部容量が極端に下がってしまったもので、テスターで確認しても容量はゼロと表示されています。
ゼロ表示ではあるのですが、mA単位のLEDを点灯させる程度の電流は流せています。
そこで、更に放電させるのにH4バルブを接続すると、一瞬光ろうとした後に回路遮断されました。
再度LEDを接続しても点灯しませんので、mAレベルの電流も出ていません。
完全に出力側を遮断された様です。
但し、バッテリー自体の電圧は11V以上ありますので、内部のセル容量がゼロになったわけではありません。
上記の様に過放電で内部セルの極端な劣化や破損を挿せない為、この仕様にされたのだそうで、このバッテリーは直流充電をしばらく行ってやる事で標準状態に戻り、テスターでもセルの破損や劣化が無い事が確認出来ました。
電子回路は日々性能や信頼性は向上し続けていますが、車両用のバッテリー本体も進化を続けている様です。