長年使用されたZ系のシリンダーヘッドは、整備やエンジンチューンの為にカムシャフトが脱着される機会は多いのですが、その回数を重ねるとカムホルダーをボルトで締結する為のヘッド側の雌ネジが壊れて引き抜けてしまう場合があります。
http://www.pams-japan.com/diary/?p=19714
その場合はヘリサート加工と呼ばれる方法で修理します。
又、エンジンのオーバーホール時に予防的に同様の加工を行うチューナーさんも多いです。
その際に使用するヘリサートコイルですが、純正ヘッドのねじ山と同時程度の長さでは母材のアルミとの噛み合い幅は変わりませんので、加工後の耐久性がそれ程上がる訳ではありません。
その為、弊社では昔から市販されているヘリサートコイルの中では最も長目の3スケアと呼ばれるコイルをヘッド側に挿入し、純正の首下長さ45mmのボルトより長い50mmのものを使用する事で母材側にかかる負荷を分散出来る様にして来ました。
又、純正より5mm長いボルトを使用する事のメリットとして、リフトの高いカムシャフトを使用する際に、ヘッド側に埋め込んだヘリサートコイルに無理な力をかける事無くスムーズに組み込み作業を行う事が出来ます。
但し、首下50mmの長さでカムホルダー締結に使用できる10.9mmのクロモリボルトは規格品では存在しません。総削り品にて製作する事は可能ですが、ユーザーに提供する為のボルトとしては非常に割高になる為、金型を起こして製作しました。
現在、これを必要とされるユーザーやチューナー向け製品として、販売を開始しています。
https://pamswebshop.my-store.jp/shopdetail/000000000230/ct41/page1/recommend/
ボルトの頭は、専用金型による鍛造品です。
一般的なフランジボルトはフランジの関係で頭部が高くなるのですが、弊社製のものはZ1系の純正より薄く、大幅に低くなっています。
れにより、一部の年式のヘッドカバーの内側にボルトの頭が干渉と言う様な事もありません。
又、フランジ部分の外径は純正より僅かに大きくして、カムホルダー側の座面への沈み込みを防止し、緩みによるトルク低下を起こさない様にしています。
ねじ山部は耐久性の高い転造製法で製作しています。アルミより硬いヘリサートコイルへの繰り返し使用にも耐える様になっています。
下の写真は汎用の50mmボルトとの比較ですが、有効ねじ幅を汎用品より若干長くしていますので、必要以上に3スケアコイルを沈ませてやる必要もありません。
注意:純正シリンダーヘッドにこちらのボルトを使用するには、シリンダーヘッド側に3スケアのヘリサート埋め込み加工が必須となります。
無加工の純正ヘッドにはボルト先端が底突きする為、使用出来ません。
又、ヘリサート加工後は組み付け前に仮組みを行い、確実にホルダーを締められる事を必ず確認して下さい。