ボーリング上がり等のピストンやシリンダーボアを測定する際の温度管理が重要である事を聞いた事ある人は多いでしょう。
当然我々も、分解したエンジンの摩耗度や、加工仕上がり後のものを測る機会は多いのですが、実際のとこエンジン部品はどれくらいのレベルで寸法変化が起きるか。
お見せするのにちょっと試してみましょう。
これはKZ1000の純正中古ピストン。ボア径70mmと言われています。
室温大体20度で測定しますと、69.959mm
ちなみに1/1000台で測ると、ピストンを触っているだけでじわじわ寸法が変わって来ます。
このピストンを、少しの時間ファンヒーターの前に置いてみます。
対物温度計で測定したところ大体70度位迄上がったところで測定してみます。
ちなみに70度って、熱くて触れないって程でも無いです。真夏の車のボンネットやルーフなんか、もっと凶悪な温度まで上がりますね。
絶対温度で50度程度上がっただけで70.059mmと、0.1mmも膨張しました。
運転中のピストン温度は、70度どころではありませんので、これを遥かに上回る膨張をしています。但し、ピストンの入るシリンダースリーブは膨張率の低い鋳鉄ですので、一般的には運転中はクリアランスは狭くなる方向になります。
ところでピストン素材による熱膨張寸法ですが、よく鋳造は膨張率が小さく、鍛造品(更に高強度素材のRR合金等)の方が膨張率が大きいのでクリアランスを大きくせねばならないみたいな言われ方を良くされます。
一般的な傾向としてはまあ間違いでは無いのですが、ピストンはアルミのインゴットではありません。設計による形状の違いによっても温度変化による膨張量が変わります。
ですので、必ずしも鍛造品が極端に大きなクリアランスを取らねばならないかと言えば必ずしもそうでは無いものもあります。