酷いオイル漏れを直す為に入庫した900 A4。
シリンダーベースGKとヘッドGKの交換を予定していたのですが、3番シリンダー/ピストンがほぼ焼き付きに近い状態だった為、エンジンOHへとメニュー変更となりました。
前回もUPしましたが3番ピストンはこの様な状態。
純正ノーマルピストンです。焼き付いた状態で無理やり擦動していた為か、ピストン側面は削り取られた様な状態です。
既にピストンリングは固着し全く動かない状態です。当然この気筒のコンプレッションは限りなくゼロです。
取り外したオイルパン。オイル窓からもその兆候は確認しておりましたが、予想以上にオイルが乳化していた形跡があります。
状況からして乳化したオイルがエンジン内各部を巡っていた可能性が高く。
こちらはクランクケースアッパー側。
ブローバイ取り出し部分。
クラッチカバーの内側。
ミッションギアにも乳化したオイルが纏わりついているのが確認できます。
キックシャフト。
乳化現象はエンジン内で結露に近い状態となった場合にその水分がオイルに混入し発生します。乳化の元は水分ですから、当然それが混ざった状態のオイルでエンジン各部を潤滑は宜しくありません。
エンジンオイルが乳化しやすいのは、特に外気温とエンジン内部の温度差が大きくなる冬場。更にチョイ乗りが多く、油温が適温に達する前にエンジンを止めてしまう様な乗り方を続けた場合に乳化が起こる可能性が高くなります。エンジン自体の温度に対し、油温は遅れて立ち上がりますから、暖機をしたつもりでも油温が上がりきっていないと、エンジン内部やオイルに取り込まれた水分が蒸発しきらずに残ってしまうというわけなんです。
例えばですが冬場にあまり乗らない為、せめてエンジンにオイルを回してやろうと数分間だけアイドリングする。当然こんな程度で油温は適温まで上がりきりませんから、これを繰り返す度エンジン内で結露が発生した上に蒸発しきれず、水分を貯め込んでしまう可能性が高くなります。オイルを回すだけなら、プラグを外し圧縮を抜き、スターターモーターまたはキックでオイルを回してやったが良いと思います。
この3番ピストンの状態を見ながら考えていたのですが、こうなってしまった原因は、もしかすると乳化しきったオイルにより本来の潤滑が出来なくなっていたのではないかと思ってみたり。エンジン自体はノーマルですし、それほど大きなストレスが走行により掛かっていたとも考えにくく。他の気筒もアタリが強くカジリつく一歩手前となっていました。
因みにですがこの車両は主に通勤に使用されており、またその距離が短かった様でオイルの乳化現象と関連があったのかもしれません。
焼き付き状態となった3番ピストンと隣の2番コンロッド。色の違いにお気づきでしょうか。
焼き付いた3番は、この状態で無理やり回された為に発生した熱によるものなのか、既にピストンピンとコンロッド小端部はロックされ動きません。そしてそれを物語る様にコンロッドまで焼き色がついてしまっています。小端部はまずアウトでしょうし、下手をすると大端部ベアリングやジャーナルまでダメージが及んでいる可能性が高いと見ています。
多少の乳化であれば、それが大きなダメージに至る可能性は低いと思いますが交換の際に抜いたエンジンオイルがあまりにも酷く乳化している場合、オイル交換は勿論の事、普段の扱い方に問題がないか考えてみた方が良いかもしれません。
また補足となりますがノーマルキャブ+クリーナーBOX仕様の場合、発生したブローバイガスはエアクリーナー側に負圧によって強制的に吸い上げられ、再び燃焼させられます。対してキャブレター交換され更に社外のフィルターやファンネル仕様となっている物は(大気解放)ブローバイを吸い上げる事が出来ない為、クランクケース内に水分が残り易くなりますから更に注意が必要です。
乗る時にはある程度の時間または距離を伸ばす事で、適温まで油温を上げてやる。それによって取り込まれた水分を飛ばし乳化を防ぐ。必要以上に大きなオイルクーラー等でオーバークール状態になっていないか等。心当たりのある方はちょっとだけ気に掛けてみてくださいね。