先日より再ラインナップしているVPSシステム。
ASウオタニフルパワーキットが元々持っているTPS(スロットル開度センサー)を使っての点火時期補正機能を、ハード的に装着し易いVPS(負圧センサー)からの割込み信号で利用する事を狙った増設パーツです。
メリットとしては、ハード面での装着の簡易さ。負圧はエンジンポートから取り出ししますので、ノーマルはもちろん、FCRやTMRにCR、VM等キャブレターを選ばないところです。
まず、これを着けるとどうなるかですが、正直全開にして測定を行うピークパワーは変わりません。
実際、シャーシダイナモで測定しても最高出力の測定方法で、パワーカーブには誤差程度の違いしか表示はされません。これはVPSを使ってもTPSを使っても同じです。
点火時期制御を行ってもっとも違いが現れるのはどこかと言うと、実はストリートでの巡航中や緩加速時。アクセル開度で言えば全閉から20~30%程度で走っている時でしょう。
例えばですが、サーキット走行専用車やレーサーならともかく、ストリートでは走行中のかなりの割合でゆっくりと走っている事が多いです。
特に旧いとは言え1,000cc近くも排気量のあるZ系ではそれが顕著で、このクラスになると全走行時間の90パーセント以上がその領域で走っていたりします。
お客さんからも良くなったという声はいくつかいただいていますが、具体的にデータで示した方が信憑性も高く解りやすくもありますので、弊社のダイナモで実験した時の写真を合わせてお見せします。
VPSシステムを装着済みのZ1
ちなみに、VPSシステムのハーネスは、入力を切れる様に最初から配線を抜ける様にしています。この白黒のコードを挿し込むとVPSが働き、抜くと無効になります。
ダイナモは、リターダーブレーキ機能を使って負荷をかけて一定走行する様にセット。
アクセルを一定迄開いて固定し、そのままだと回転もスピードもどんどん上がるところを50km/hでリターダーによるブレーキがかかる様にしています。
同じアクセル開度、同じ速度でブレーキが使われているパーセンテージが高ければそれだけエンジンは廻っていこうとする、すなわち負荷に打ち勝ってバイクが進もうとする力が大きくなっていると言う事になります。
これは、VPS機能を無効にして走行している状態。50km/hでブレーキによる負荷がかかって、それ以上回転が上がらない状態に釣り合いの取れるブレーキ率は11パーセントとなっています。
これだけブレーキをかけると回転が上がらなくなるので、ブレーキ率=エンジン出力数値とも言えます。
回転数は3500rpmですので、アクセル開度はさほど大きくもなく、2~3速で緩やかに加速中であると思って下さい。これ位だとエンジンの負荷も少なく回っています。
ここで、上の写真の白/黒のコードを挿し込んでVPS機能を有効にします。
VPSはエンジンの負荷レベルを検出して、点火時期を進める方向に補正します。
少しずつリターダーブレーキの使用率が上がっていきます。
ブレーキをかけないと、燃焼効率が向上してパワーが出た分、速度も回転も上がっていってしまうからです。
ちなみにこの時タイミングライトで点火時期を見ていると、まずVPSを有効にした瞬間に点火時期が一気に進みます。エンジンが低負荷で回っている事をセンサーが検知するからです。
それがブレーキ使用率が高まるに従って進角度が少なくなります。
この間エンジン回転数もアクセル開度も同じままです。
これがVPSの特徴で、エンジン負荷を直接読み取りしていますので、回転数やアクセル開度が同じでも負荷に応じての点火時期補正に反映出来るわけです。
最終的には24パーセント迄ブレーキ使用率が上がりました。
アクセル開度はこの測定の間固定したまま変化させていません。
実際にこれが走行中にどういった感覚になって現れるかと言えば、低負荷巡航走行中から緩加速、アクセル開度が回転に釣り合っている状態の加速中に燃焼効率が高まって、エンジンがより回りたがるようになります。
結果として、同じ速度で走ろうとするならアクセル開度は少なくなりますので、取り付けたお客さんからの「燃費が上がった」という感想も当然あり得る話ですね。