長年の使用でバルブシートリングが摩耗してゆくと、バルブステムエンドは突き出す方向に上がり、仕舞には最薄のシムを入れても適正なバルブクリアランスが確保出来なくなるばかりか、バルブがポート側へと沈んでゆく事により、燃焼室容積が増加して圧縮比も低下します。
そこで使用限界を超えたシートリングは打ち替えとなるのですが、同じ空冷ZでもJ系以前とそれ以降ではシートリングの固定方法が異なります。
Z系ではシートリングをヘッド側に鋳込まれている構造に対し、J系は一般的な圧入としています。
さて、タイトルにある「裏事情」ですが、最近J系のシートリング交換時にふと思う事がありまして、先ずは下の画像をご覧ください。
これは1000RのEX側リングを抜き去った状態ですが、ヘッド側シートリングの着座面に排ガスが侵入した様にも見える形跡があります。これがEXポート内から座面に侵入ならまだよいのですが、燃焼室側からとなると燃焼ガスが漏れてしまっている可能性が出てきます。先にも申し上げた様に、鋳込みとなるZ系ではこの様なトラブルは構造上起こりえません。
インテーク側。微妙です。
こちらもインテーク側。ガスが回っている様な、それでも一応抜けてはいない様な微妙な痕。ただ圧入部分の側面にも若干ガスが通り抜けた様な痕がある様にも見えます。この数週間でたまたまJ系ヘッドでシートリング交換メニューが立て続いたのですが、どれもが程度の差こそあれ上記の様な傾向が確認できました。長年の使用によりヘッド側とシートリングとの間に若干の隙間が出来てしまうのか?何れにしろあまり気持ちの良い状態ではありませんね。