セルモーターを使用して始動させるオートバイの場合、必ずモーターの回転力をクランクシャフトに伝達する為のスターターワンウェイクラッチが装備されています。
こちらはZ系に使用されているノーマルの3ローラー式ワンウェイクラッチ。
構造としては古くからあるものですが、カワサキでは2000年代初頭迄割と様々な車両に使われていました。
見ての通り、センターのローラー当たり部分への接触はローラーの3点のみで、又、クラッチハウジング側は常時同じところの3か所に負荷がかかる為、ある程度使用するとその部分が窪んでスターター滑りの原因になります。
時々クラッチが噛んでくれればいい方で、症状が進むと始動しようとしても軽やかにギアやセルモーターが廻るだけで、全く始動できなくなります。
こちらは最終型のZ1000Pや弊社のZ用ジェネレーターコンバートキットタイプ2にも使用しているカム式クラッチ。
全周に配置されたカムが、スターターモーターの力を分散しながらギアの当たり部分を締め付ける様にして動力を伝達します。
このカムの多さ故、クラッチハウジング側の当たり部分は圧が分散されるので3ローラー式より遥かに長持ちしますし、圧縮を上げた等でのチューニング時にも最適で、容易に滑りを生じる事がありません。
さてカム式のクラッチですが、容量は多いもののローラー式と違ってカムはセンターギアの上を転がらないので、ギアの当たり部分が走行で摩耗してしまうのではという質問を受けた事があります。
ただ、実際には下の動画の様に、内部の細かなカムはエンジンが始動すると遠心力で倒れて外に向かって広がりますのと、低回転中も油膜の上に乗ってセンターギアの当たり部分を滑って浮き上がりますので、始動時の接触時以外では摩耗する事がありません。
ジェネレーターコンバートキットタイプ2では、純正のZのスターターギアがそのまま使用可能にしていますが、元々の3ローラー式より遥かにギアは寿命は延びる位です。ご安心ください。