今日は、インジェクションに興味を持っていただいてたり、実際にキャブ車のEFI化を行っている人向けの記事です。
EFI化した場合に必ず必要なインジェクターですが、構造的には通電する事によって弁を開くソレノイドです。
動画では、パルス状に通電して噴射量を制御しています。
通電パルス時間は2msec(2/ 1000秒) 周波数は100Hzですので6000rpmに当たります。 テスト動作は100回で、丁度1秒間の噴射です。
さて、インジェクター内の燃料はポンプで圧力がかかっていますので、動画の様に通電時間中噴射する事が出来るのですが、機械的に弁を開け閉めする為、通電を開始してからソレノイドが反応して完全にバルブが開く迄の間と通電カットで閉じる迄の間には必ず遅延が生じます。
これが無効噴射時間と呼ばれるものです。
一般的には、バルブは閉じるより開く方が時間がかかりますので、無効噴射時間は通電開始してからバルブが開く迄が殆どです。
さて、この無効噴射時間ですが、常に一定であればさほど問題はありませんが、実はインジェクターにかかっている電圧によって結構大きく変化します。
電圧が低ければ長めに、高ければ短めにといった具合です。
これがEFIにどんな影響が出るかと言うと、燃料噴射の為に通電している時間がマップ上で同じでも、バッテリー電圧を含むシステムの電圧が上下すると、結果として結果として実際にガスを噴射している時間が変化してしまうという事になります。
例えばですが、ヘッドライトを点灯すると一般的には電圧が下がりますが、そうすると無効噴射時間は長くなります。燃料マップ上での通電時間は同じでも、相対的にインジェクターが開いている実噴射時間は短くなりますので空燃費が薄い方向に振れてしまう事になります。
そこで一般にフルコンでは、電圧ごとの無効噴射時間を設定する項目があり、そこにインジェクターの無効噴射時間特性を打ち込んでやれば、電圧が変化しても実際の噴射時間が同じになる様に補正をかけてくれる機能が付加されています。
ただ、純正流用のインジェクターは以前に測った噴射容量はもちろん、無効噴射時間の電圧毎のスペックなんてものも公開はされてません。これも実際に測ってみるしか無かったりします。
パソコンの横にある白い箱は実験用の定電圧電源です。
これでシステムの電圧を調整しています。
今回使っているLinkのECUでは、インジェクターのテストモードがありますので、それを利用してパルス幅を少しずつ増やしてガスが噴射を開始するポイントで無効噴射時間を探ります。ソフト上で「テストインジェクションパスル幅」となっているのは御愛嬌としましょう。(笑)
最近のオートバイに使われる一般的なインジェクターでは、大体14V 時での無効噴射時間は1ms(1/1000秒)程度。
オレンジのインジェクターはDAEG等にも使われているものですが、11V~15V 迄の間で1 ~0.7msec(1/1000秒~0.7/1000秒)程度も無効噴射時間が変化します。
ちなみに、弊社のZ1000Jですが、このインジェクターを使用した場合でアイドリング中の毎回転噴射でインジェクター通電時間は2msecを切ります。
軽く走っている時でも毎回転あたりの通電時間は3msecを超える事はありませんので、割合的には結構電圧変化により影響が大きくなります。
更に、無効噴射時間は噴射容量の少ないインジェクター程短くなる傾向にあります。
隣に並べたグレーのインジェクターは、DAEG用と比べて15%程噴射容量の少ないものですが、こちらを実測すると11V~15V 迄の間で0.75 ~0.55msec程でした。
その分実噴射時間に対しての割合は少なくなりますので、制御精度が上がる事になります。
以前にも記事にしたのですが、インジェクター選択は容量の大が小を兼ねない理由の一つがこれです。
無駄に大きいと制御精度が下がってしまいますので、排気量や出力に見合ったインジェクターを選択する必要があります。