バルブスプリングの仕様というものは、決められたシリンダーヘッドの空間内寸法の中で、バルブを閉じた際のセット荷重とカムシャフトによって最大リフトした際のリフト時荷重比がエンジンの仕様やメーカーによって大まかに決まっています。
例えば、Z1,Z2、Z1000Mk2、Z1000J,R、GPZ1100と年式が進むにつれてカムのリフト量は増えていますが、バルブのセット時荷重と最大リフト時の荷重は各年式ともほぼ同じです。
これは以前にも記事にしましたが、スプリングテスターを用いて実測するとデータにきちんと現れます。
ですので意外かも知れませんが、エンジンに組み込んだSTD状態の高さから例えば同じだけ9mmリフトした場合、Z1系の純正、Z1000J、GPZ1100の各スプリングで最もリフト時反力が高いのはZ1系のものだったりします。
イメージ的には年式が進むにつれてエンジンチューン度が高くなりますので、スプリングレートが高くなっている様な認識をしている人も多いかも知れませんが、むしろ逆になっているわけです。
この為、単純にバネのレートが高いからハイリフト対応の”強化スプリング”?に使えると言った単純な考え方は出来ません。
スプリングの選定を間違って、ハイカム使用によりリフト量が増えたからと無用にレートの高いスプリングを組んだりして、その分荷重が極端に大きくなると、カム山やタペットの極端な摩耗、カムチェーンやアイドラーにテンショナー周辺の破損の原因になります。
又、ハイリフト時にスプリング線が密着しない様にした対応スプリングを作るとすると、通常の手法としては線径を細くして巻き数を減らす事になります。
但し、巻き数を減らすとリフト量に対してスプリング線の長さあたり捻じれ量の割合が増える分、材質や製法が同じであればスプリングのへたりは早くなります。
具体的には、スプリングの自由長が縮む事で本来必要な荷重を下回ってしまうので、それがトラブルの原因になるわけです。
一般的にハイリフトカム対応として販売されているバルブスプリングでその様に製作されているものは”強化品”というわけでは無く、むしろ寿命については純正を上回る様なものではありませんから、Zの場合カムリフト量が11mmに迫る様なカムを使ってそれに対応出来る様なスプリングを使用しているのであれば、ある程度の距離を走行したら定期的な点検と注意が必要です。
但し、21世紀になってから一般化した技術では、巻き数を減らさずともハイリフト時にスプリングは密着せず、なおかつ純正品と等しい耐久性を併せ持たせるものがありますので、何とかそれをZ系ヘッドの中に納める寸法に出来ないか計算中です。