クランクシャフトにニードルベアリングを採用するZ系のオイル油圧がどの程度かと言えば、走行後に完全にオイルが暖まったアイドリング中に測定するとこんな感じです。
ほぼゼロに見えますが、ほんの僅かに針は振れています。
ちなみに、こちらの車両はオイルポンプを新品に交換したばかりです。
この数値を見て、Z系のオイルポンプは能力が異常に低いので問題だと考えてしまうかも知れませんが、本当にそうであればメーカーもポンプとクランク間のギア比を変えてポンプが更に高速で回れば良い様にすれば良かっただけの話です。
必要も無いのに油圧を上げるのにエンジンパワーを食わせるのでは無く、むしろこれで問題が起きないからこその設定と考えられます。
例えば、現行エンジンの様にクランクシャフトがプレーンメタルであれば、燃焼圧力のかかる軸受け部分の隙間に強制的にオイルを送りこむ為にもそれなりの油圧が望まれますが、Zと同じ様に金属ベアリングで支持されている2サイクルのクランクシャフトが、混合気に僅かに混じったオイルがミストの様に付着するのみで潤滑出来る事を考えると、オイルは流れてさえいれば良いと言う事になります。
Zの場合はカムシャフトはプレーンメタルですが、運転中でも軸部分にはクランク程の負荷は掛かってはいません。それでもカムメタルやカムジャーナルが摩耗するのは、完全にオイルが落ちた状態での始動によるものですので、運転中の油圧の低さとは関連が薄いです。
ちなみに油圧がほぼゼロ近くと言っても、ポンプが正常であればオイルは流れています。水道の蛇口を開いて、手を支える程強い力が掌に当たる様な事はありませんが、オイル缶を開けて傾けた口からタパタパとオイルが流れ落ちる様に注がれているイメージだと思って下さい。
ちなみに先日純正のオイルプレッシャースイッチをプレッシャースイッチに変更しましたのは、それ程ゆっくり流れるオイルの通り道を少しでもスムーズにするのが目的です。
それでもオイルポンプが正常であれば、回転を上げるとこの様に僅かながらですが油圧は上昇します。
マニュアル上の規程値では 60℃時3000rpmで、20kPa以上となっています。
動画上のエンジンでは油温90℃前後の2000rpmで、それを超えています。
ただ、オイルポンプは長年使用するとストレーナーを通してさえも細かな金属粉等を吸い込んで内部が摩耗し、回転を上げても規定の油圧に達しない様になりますから、その場合は交換が必要となります。