これはZ1系の純正インナーローター方式マグネットローターですが、フルノーマル状態はもちろん、チューニングしたエンジンだったりすると割とセンターの8mmボルトが緩み易かったりします。
緩むだけならまだしも、回転止めの為に入れていると思われる半月キーが折れて、ローターがクランクシャフトに対して空転してしまうと、ローターの内部テーパーがこの様にガリガリに摩耗してしまいます。
こうなると半月キーを交換して締め直しても、テーパー内部がクランクシャフトエンドに密着しませんので、いずれ又緩みが生じて半月キーを砕いて空転となります。
こうなるとマグネット内部テーパーの修復も出来ませんので、既に廃盤部品のマグネットローターの優良品を調達せねば修理が不可能になってしまいます。
実際のとこ、弊社がジェネレーターコンバートキットなるものを製作したのも、充電性能の向上というより、まともなマグネットローターが無いと言う切実な問題が最初にあったりもしました。
緩んでも砕けない様な半月キーを作ればという考え方もあります。ちなみに純正の半月キーですが、実はさほど硬い物ではありません。写真の様に軽くポンチを当てれば見事に凹む程度です。
ただ、これを硬くすると今度は緩んだ際にクランクシャフトエンド部分の溝が割れてしまう事があります。硬い鉄は摩耗には強くても打撃には弱い傾向がありますので。
やはりまずは緩まさない事が先決だと思われますが、元々このセンターのロックボルトは、この部分に使うボルトとしては若干硬度が低く、規定トルクもマニュアル上で約25N/mと決して高くありません。
ですので、これを強めに締めても延びてしまうだけで締結力に結び付かない為、特にクランキング時にテーパー部分に負荷のかかり易い高圧縮化したエンジンの場合緩み易くなってしまいます。
まずは、マグネットローターの内側テーパーに極端に荒れが出ていない事が前提ですが、弊社ではロックボルトを強度12.9のクロモリ製に変更し、45~50N/mで締め付けする様にしています。 但し、一度ここまでの力で締め付けした8mmボルトはクロモリでも伸びますので、脱着の都度廃棄して交換する様にしています。
ちなみに上記の半月キーですが最近の車両にも使われており、これはエストレアのフライホイールですが、それ用の溝も切られています。
但し、この場合の半月キーは廻り止めの役目は無く、エストレアの場合はフライホイール外周の突起でクランク角度をセンサーがピックアップしている為、その為のく度決めで入っているに過ぎません。
やはり、フライホイールの廻り止めは、クランクエンドとフライホイールのテーパーがきちんと密着して、適正な締め付け力で押し込まれる事による面接触で維持するのが現在の手法の様です。