動弁系の軽量化は、エンジンのチューニングアップの世界では結構行われます。
例えばバルブはエンジン回転数の半分、6,000rpmで廻せば一分間に3,000回、一秒間に50回の上下動ですので、僅かな軽量化でも効果はあります。
バルブであればチタンバルブ等の素材変更による軽量化やウエストバルブや傘部分の薄肉化にステム径を細くする等の形状変更。
又はバルブ上に位置するリテーナーのやはりチタンやアルミ化に形状変更。
そしてリフター上のクリアランス調整の為のシム形状を径の大きなアウターシムから小型のインナーシムにと。
これらの部品は全てシリンダーヘッドより離れており、エンジン運転中は高速で上下する部品ですので、その軽量化は効果がストレートに現れるでしょう。
そこでバルブスプリングです。
この部品は組み込まれている状態では必ず片側がシリンダーヘッド側にスプリングシートを介して当たっており、そちら側は位置を変える事は無いのですが、その反対側にかけてのスプリングそのものはバルブの上下と同じ回数だけ収縮を繰り返しながら高速で上下します。
そうなると、スプリング重量の全てがでは無いにしても1gでも軽くなればやはり効果はあるでしょう。
それではスプリングを軽量化するにはどうすればとなるのですが、金属スプリングの代わりに空気を使用する様なF1マシン用の様な特殊なエンジンを別にすれば基本スプリングはばね鋼と呼ばれる鉄製です。
ちなみにスプリングのレートを変更せず軽くするのであれば、線径を細くして巻きピッチを荒くすれば、その分軽くなります。
但し、それを同一強度の素材でバルブスプリングで行うとどうなるか。バルブ廻りがカムに押されてストロークした場合に線材の単位長さあたりの捻じれ量は相対的に増えてしまいますので、使い込むに従ってスプリングの自由長が縮んでしまう=組込み時の荷重も減ってしまうのが早まると言う事になりかねません。
手っ取り早く言えば”へたって性能の劣化が早まる”と言う事です。
ところが、昨日のブログで少し触れました通り、バルブスプリングに使われるバネ鋼は、1990年代、2000年代、更に2010年代と、クロムやバナジウムの配合方法や各種の製法技術の向上と仕上げ時処理の追加によって飛躍的に進化しています。
従って最近の素材をベースに、レート特性を仮に変えないまま設計し直したとすると、細くしてピッチを広げる事で軽量化したスプリングを製造出来ると言う事になります。
更に細くしてピッチを広げると言う事は、チューニング時にハイカム等を使用してスプリングの圧縮量が増えても、スプリングの線間が全密着する等の破損に繋がるリスク迄のマージンは増える事にもなります。
もしくは、鋼材の進化部分を軽量化ではなく耐久性面に振ってやって再設計するのであれば、長年使っても自由長が変化せず、性能劣化も殆どしないというスプリングとなるでしょう。
ちなみに、Z1000JやGpz1100のバルブスプリングはアウター線径が3.74mm インナーの線径が2.75mm 鉄でできているわけですから僅かでも巻き数を減らす=短くなる事での軽量化の度合いは無視できない差になります。