昨日のブログでも出ている通り、Z1000Jは常に仕様変更しながらZ系EFI化を普及させる為の実験やアップデートを繰り返しています。
実際、メーカーの販売する車両は、4輪2輪問わずモデルチェンジする度にエンジンコントロール部分においてはハード、ソフト共に何かしらの進化や改良が施されているものです。
先日も走行ログを見ていて気になる事がありました。
現在使っているLINK製ECUは、数十のデータ毎秒数十回のサンプリングを行いながらかなりの長時間本体にログデータとして記録して、後でチェックする事が可能です。
その中でちょっと気になるのが電圧の振れで、一番下のグリーンのグラフが電圧の遷移です。
大体で0.6V程度上下していますが、ヘッドライトを点灯したりブレーキ、ウインカーを使用した際に結構コンマ台で振れているのがわかります。
又、巡航走行中にも同じ車両でのキャブレター車に比べると若干電圧は低めです。
ちなみに弊社のZ1000Jは、レギュレターのみをMOSFET型に変更して効率は上げてはいますが、あえてテスト的な意味でジェネレーターその物のアップデートはまだ行っていません。
いずれは変更するにしてもノーマル発電系でどこまで行けるかのデータ取得の為です。
実際のところ、Z系をEFI化してもMK2系以降のアウターロータージェネレーターを採用している車両であれば、ヘッドライトを点灯して走行していて13.5V程度コンスタントに出ていればバッテリー上がりの心配は無用です。
又、多少電圧が下がっても以前データ取得してインジェクターの噴射時間にも補正がかかる様にはしてありますので、走行性能には影響は殆ど出ません。
但し、それにしてもさほど余裕が無いのは事実です。
例えば、純正でEFI化されていたZ系のZ1000H、1100GPやGPZ1100ですが、長年使用していくらかでも発電系が消耗するとキャブ車であれば問題無いレベルでもEFI車の場合はバッテリーが上がり易かったりします。
電気を余計に食っているのはこのフューエルポンプ
右のものはZ1000Jにテスト的に使用している米国ワルボロ製、左のはZ1100GPの純正で日本製のもの。
EFI化には欠かせませんが、これを既定の燃圧迄作動させると大体4~5A H4規格のヘッドライトをもう一つ点灯させた程度の電気を消耗します。
現状ではZ1100GPの時代と同じく、このポンプはオンオフの制御のみですので、エンジン運転時には全開で回しています。
ただ、例えば昨日記事の様な走行で低回転の場合、ポンプを全開稼働させなくとも充分な状況はストリートでは多いです。
ですので、現代の技術で必要の無い時にはポンプの稼働率を下げてやろうと思います。上手くいけば電力の無駄使いは避けられますし、ポンプの寿命はもちろん負荷による発熱を吸収している燃料の温度も下げられる筈なので吸気効率も上がるのではとの期待も出来ます。
先に書いた通り、昔のEFI(カワサキだとDFIと呼んでいました)はもちろん、オートバイは4輪に比較して実走行時間が短い為かポンプの稼働率制御を行っている車両は現行車でもむしろ少ないです。
これは、エアコンやオーディオ等の電力が必要な装備がオートバイには無く、発電システムの能力向上で対応出来たからではとも思えます。
ただ、4輪の場合は排ガス対策の関係でかなり早い時期からEFI化が進み、フューエルポンプの制御に関しては遥かに進んでいますので、元々発電容量に余裕の無いZ系を含む過去の車両をEFI化するのに、このあたりのシステムノウハウを知っている4輪技術者様のお知恵も借りながら実用的な稼働率制御を行いたいところです。
写真は、ポンプの駆動用電力を制御する為のパーツ。
右側のフィン付きのものは、4輪の純正部品で既に1990年代から同システムとしての実績がある構造。
左のものは最近の汎用ソリッドステートリレー。内部に機械式接点の無い半導体式リレー。
どちらも高速で電源のスイッチングを繰り返し、モーターへの通電時間を下げる事で稼働率を変化させるシステムです。
特にソリッドステートリレーは以前は発熱が多く、大電力の制御や早い速度のスイッチングが出来ませんでしたが、ここ数年で直流の大電力でも制御出来るものが出現しています。メーカーに聞いてもみたのですが、どの程度の発熱範囲に収まっているのであれば大丈夫ですとの回答をいただいているので、これもテストしてみようと思います。
ちなみに、ジェネレーターは車両が必要とする電力を発生する際にはその分負荷となってエンジンの馬力を食います。
バッテリーの容量が下がっている時やヘッドライトやウインカーはもちろん、点火システムも大まかにですがヘッドライトのハイビーム点灯程度の電力は消費しています。
ですので、アイドリング運転中にヘッドライトを点けると僅かにながらエンジン回転が落ちるのはこれが理由です。
(発電容量に余裕のあるジェネレーターを装備し、制御するレギュレータ―の性能が向上した最近の車両では回転落ちも僅かですが)
逆にその状態で発電系のコードをカット(レギュレータ―への交流出力線)を抜くと、ヘッドライトはもちろん、点火システムが消費している電力も発電しているジェネレーターがエンジンにかけている負荷は無くなりますので、明らかに回転は上がります。
スプリントレーサーは、発電の為の僅かな負荷抵抗も少なくしたいですから、発電機を取り外してバッテリーに保持出来ている電力のみで点火システムをつかうわけです。この場合バッテリーが空になると走れなくなるので、公道車両ではジェネレーターが必要です。
例えばですが、フューエルポンプがどれくらい馬力を食うかと言えば、ダイナモ上でジェネレーターを作動させた状態とカットした状態では最高出力にコンマ数馬力の差が出ます。
(誤差範囲の様ですが、何度やっても同様に差が出ます)
ポンプの稼働率をどこまで下げられるかにもよりますが、上手く出来ればこの差は無くせるかも知れませんね。