これはGPZ,Z1100R系のバルブスプリング。
J系以降のバルブスプリングは、写真の様にインナーアウター共に密巻きの部分と荒巻きの部分があります。
スプリングは、線径が同じであればピッチを密に巻くと柔らかく、広く巻くと硬くなりますが、途中で巻き方を変える事で、圧縮の初期は柔らかくてストロークが一定以上になった際に踏ん張る様に硬くなる様な使い方が出来ます。
特にサスペンションではそう言った使い方は良くされますが、Zのバルブスプリングについてはそう言った使い方はあまり重視はされてはいない様です。
これは完全にフリーで圧縮して無い状態。
これをヘッドに組み込んでセット荷重をかけた状態での高さはこの状態です。
アップで見るとわかりますが、密巻きされている下から3巻き目辺りまでは、シリンダーヘッドに組み込んだのみの状態で既に線間がほぼ密着しています。
この様にJ系以降のバルブスプリングにおいては、密巻きされている部分は前もって密着させる事でバルブのジャンプの原因になる共振の抑制の為に使われています。
バルブリフトストロークを受け持つのは巻きピッチを広く取られている上側の部分が殆どと言う事になります。
その分、有効スプリングとしては短くなっているのに、それ以前のZ1系より増したカムリフト量に耐えられるのは、素材の進化によって短くしてもより耐久性のあるスプリングが作られる様になった事が理由です。
ちなみに、このJ系スプリングとGPZ1100系スプリングは線径と素材は同じもので、1980年代迄に設計されたカワサキエンジンにはZ系J系以外の車種にも結構使われていました。
バルブスプリングのジャンプを抑制する方法として必要以上にばねのレートを上げると、カムやチェーンはもちろんの事、フリクションも増加して動弁系の全ての部品の消耗が進みます。
市販車両としての寿命を考えれば、いかに必要以上にレートを上げること無く必要な荷重を確保して、バルブスプリングの共振を抑えるかが現行車に至るまで考えられています。