同じ様に被膜が厚目の電線が二種類
上側は現在弊社でエンジンに組み込まれているジェネレーター用ステーターコイルへの結線で使用している耐熱被膜のもので、下側のものは自動車用電線としては数十年前からあるAV線と呼ばれるものです。
ちなみにZ1からGPZ1100に至るまでのメインハーネスを構成する電線は全てこのAV線で、自動車用品店で素材として小売されていますので、一般の方には最も入手し易いベーシックなものです。
見た目には殆ど違いはわからないと思いますが、どれぐらい耐熱性に違いがあるかを、半田コテの先を被膜に当てて試してみます。
ちなみに、この半田コテで使う半田線の融点は約220℃、コテ先温度は300℃プラスあります。
耐熱電線の方は、表面に擦ったかなと言う程度で、全くと言う程変化は見られません。片やAV線の方は、被膜が煙を上げて溶けながら焼け焦げました。焦げていない部分も硬化してしまっています。
又、中の銅線も酸化して表面の色が銅色から茶色っぽく変色して来ています。
もちろん空冷エンジンの表面で300℃にも至る部分は無いのですが、長期に渡って100度を軽く超える温度に曝されるとAV線は硬化して割れる様になります。
スプロケットカバーを開けてメンテナンスする際に、ジェネレーターに繋がるコードがプラスチックの様になって折れそうなのを見た人も多いでしょう。
さて、各々の被膜を剥くとこんな感じです。
芯線自体はどちらも銅製なのですが、耐熱線の方は錫でメッキされています。
新品時の電気抵抗自体はメッキしていない方が有利なのですが、大気に曝した銅は、みるみる表面が酸化して電気的な導通が悪くなります。周囲の温度が高く、湿気もあるとなると尚更で、加速度的に進行します。
ちなみに更に抵抗を下げる為に半田付けした場合、メッキ銅線は半田付けした部分のすぐ横でも表面酸化は防止出来ますが、普通の銅線の場合は半田付けした部分のすぐ隣の銅が出ている部分の色が変わり、そこが明らかに酸化しているのがわかります。
余談ですが、下のAV線は半田を流した熱で被膜の先端部分が溶けてしまっているのが確認出来ます。
銅線のメッキについては、Z1系でも当時から施されていました。これは、発電電流や周囲温度による酸化で、銅線が劣化する事を防ぐ目的だと思います。