これは、空燃費計と一般的に呼ばれるユニットと、それ用のO2センサーです。
空燃費計をEFI(電子式燃料噴射-インジェクション)システムを装着した車両のセッティングに使用するのは4輪業界では遥か昔から行われておりますし、弊社でもシャーシダイナモを使用してセッティングを行う場合は、排気系に長いプローブを挿入して空燃費データを採りながら各回転数や加速中のセッティングの判断材料にしています。
こういったデバイスの進化と普及は目覚ましく、4輪市場での普及に乗っかる様な形ではありますが、高性能化と低価格化が同時に進行していますので、EFI化した車両のみならず、キャブレターのセッティングにも用いられる方も多い様ですが、注意点がいくつかあります。
まず、電源について、空燃費計ももちろん電源が必要なのですが、搭載車両の電源に割り込ませて使う場合が普通です。ただ、オートバイの電源はノイズ成分や発電機から生じた交流電力をレギュレータ―で整流して直流電源にしても、ある程度は交流時の波や揺らぎが残ります。実際オシロスコープで見ると波形になって確認出来るのですが、4輪に比較すると電源としての品質としてはかなり劣りますので、それ用に設計された空燃費計をそのままオートバイに使用するとメーカーによってはそれによって正しい値が算出出来なくなったりするものがあります。
ですので、車載状態でより精密なデータの採取を目的にする場合は、電源は車両から取らず、別口で専用の独立したバッテリーを電源として用意して使います。
又、もう一つ大事な事は、まず空燃費計はO2センサーでエキゾーストの排気ガス中の残留酸素濃度を測定して、そこから計算値を算出していると言う事です。
これが何を意味するかと言えば、残留酸素量がエンジンでの燃焼状態を必ずしも示さない状況もあり得えると。
例えば、オートバイのエンジンは、市販車としても4輪のそれより一般的にチューニング度は高い場合が普通で、カムシャフトのオーバーラップも大きいのですが、この為走行条件によっては燃焼状態が良好でも未燃焼の混合ガスがいくらかエキゾーストに排出されている事があります。
当然その中には燃焼に使われていない酸素が混じっていますが、この状態で空燃費計に測定させると酸素が残っている=燃調が薄い方向に振れていると表示されてしまうわけです。(ちなみにこの未燃焼ガスの吹き抜けは、エキゾーストの抜け具合を変えるだけでも変化します)
空燃費計はセッティングには非常に有効なのですが、数値はあくまで目安として、その特性を理解した上で過信せずに使った方が良いでしょう。
自分もEFIのセッティングにはデータロガーで空燃費データをチェックしながらセッティングは行っていますが、数値が使える領域と使えない領域を読み取りながらマップ修正を行っています。