お持込頂いたシリンダーブロックとUSEDピストン。キレイに洗浄され一見そのままでも組み合わせて使えそうだったのですが、良く観ればシリンダー内径には無数の腐食痕が広範囲に広がり、ワイヤーブラシ等で均したと思われる横方向の回転傷が全体に確認できます。
また画像では少々解りにくいのですが、スリーブのツバ外径部分とシリンダーデッキ面に緩みによるものなのか段差が発生しています。
一応ピストンとシリンダークリアランス測定をしたところ、狭い所でも0.075mm、最大では0.1mmとなっており、平均でも0.085~0.09前後です。因みにサービスマニュアル上で空冷Z系のクリアランスは年式によりバラつきはあるものの、少ない物では0.04mmプラスから大きい物で0.06mmとなります。勿論使用限界値は更にその上になりますが、流石に0.1mm前後のクリアランスでノーマルピストンを組むのは躊躇います。
また腐食痕の除去と共にしっかりとしたクロスハッチを構成する為のホーニング作業も必要な状態で、しかしそれをすると更にクリアランスが増加しますから、OSピストンを用いた0.5mmのボーリング&ホーニングが現実的なチョイスとなります。
実のところ、このままUSEDピストンを組んでしまっても走るには走ると思います。しかし、この状態を解った上でエンジンを組むと言うのは誰しも望まないと思います。
判断基準はそれぞれあると思います。でも「まだ使える」と「適正値」は異なる事と思いますし、組んでしまえば見えないその積み重ねが、乗り味や耐久性といった部分で結果的に大きな違いとなって現れるはずです。