引き続きのデータ比較ですが、昨日の記事で書ききれなかったところもありますので。
さて、Z1000J系のバルブスプリングは不等ピッチ化によってスプリングの共振によるバルブサージを抑えてある事と、若干カムリフト量も増えた後継のJ系にも使われている事もあって、そのイメージからZ1系にも流用して組まれる場合も多いと思います。
以下はZ1000J,Z1000R~最終型Z1000P迄の純正バルブスプリングと弊社のESバルブスプリングタイプSとのリフト量に対する荷重特性比較グラフです。
まず青い線は純正のZ1000J,R新品、赤い線は純正で約8,000km程度走行した際のカーブとなります、昨日データ提示したZ1系のものに比較して馴染みがついたところでの荷重の落ち込みが少ないのはバルブスプリングの素材と製法の進化の為です。
イメージ上では、ノーマルカムリフトにしてもZ1000J系の方が0.5~0.6mmも高いですからセット荷重は高く設定されている様に思えるでしょうが、スプリングの耐久性が向上した分多少初期の荷重は低くなっています。
見た目からスプリング素材の違いというのはなかなかわかりませんが、Z1系のバルブスプリングは1960年代~70年代初期のもの、Z1000J系のスプリングは70年代後半から80年代初期のものである事が理由です。
ちなみに紫の線はESバルブスプリングです。
Z系と同様に、馴染みがついたところの荷重で最初から組めるようになっています。
又、Z1系に比べるといくら荷重低下は緩慢ではありますが、J系のバルブスプリングでも2~3万kmも走ると10~15パーセント近い荷重の低下が起こるほどへたりが来るのに対して、ESバルブスプリングはそこ迄下がる事はありません。
さて、J系スプリングにハイカムを組んだらどうなるかです。
元々J系は純正でも若干Z1系に比べてリフトも高いので、ハイカムにするならJ系の方が余裕があると思われるかも知れませんが、実は違い、圧縮していっての限界値はむしろJ系スプリングの方が0.5mm程度低いです。
これは不等ピッチ化による形状の違いによるものです。
もちろんJ系のノーマルカムリフト量の最大値8.8mm迄に収まっているのであれば問題はありませんが、ステージ1カムと呼ばれるものの中で高めのリフト量9.5mmを超えたところで線間密着に近くなる為、そこまでリニアな一次関数的な直線だった荷重値が急激に上昇するようになります。
下の図は、そのあたりを拡大したものです。
実際にエンジンを組む場合にはバルブクリアランス分マージンが出来ますが、ステージ1クラスカムではZ1000J系スプリングでも結構ぎりぎりまで使っているのがわかります。
単純にハイカム使用時のリフト量に対するマージンのみを考えると、後期のZ1000J系よりZ1系の方が向いている様には見えますが、その後のスプリングの荷重低下度や不等ピッチの共振サージの起き難さを考えると、考えながら組むのであればJ系スプリングもとなります。
対して、ESバルブスプリングは当然J系同様に不等ピッチによる対策も施されており、昨日も記事にした通り10mmのリフトを超え、11.5mmを超えるまでリフト荷重はリニアに安定しています。
そこまで使えるものを推奨9.5mmとして余裕を持って使う為、更に長寿命が望める事になります。