1972年のZ1から1980年のZ1000Mk2迄の第一世代Z系、外観は少しずつ変わっていますがシリンダーヘッドとブロックの高さは共通です。
(J系に関しては、年式やモデルで燃焼室形状が変更になった都合で、ブロック高がZと異なります)
まず、シリンダーヘッドの高さ。
燃焼室側側の面から、カムカバーガスケットの当たり面(カムシャフトの中心軸線と同じ)は、105mmが基準寸法です。
例えば現状で面研の履歴が不明でも、この高さを測ればすぐに判別出来ます。
ちなみに写真のシリンダーヘッドは、高さは104.80mm。
ガスケット面の荒れを取り除く為の面研ですが、0.20mm薄くなっています。
次にシリンダーブロックの高さですが、弊社が今迄に測定したオリジナルブロックからの基準値は89.55mm。
ヘッドと違い、きりのいい数値ではありませんが、おそらくは0.5mm厚のシリンダーベースガスケットを重ねて締め付けた際に(僅かに潰れます)トータル高さで90mmとなる様に設定されたのではないかと受けとめています。
こちらのブロックは実寸で89.35mm。
これはシリンダースリーブを交換する為に、スリーブを抜き取った状態で下面を研磨、交換スリーブを厚入後に上面を均す為に研磨を加えていますので、上下面で合わせて0.2mm低くなっているわけです。
Z系のシリンダーブロックは、ボアを拡大したり、長年の使用で緩んだりしたスリーブをオーバーサイズ交換にする等の際には最低でも上面の研磨は必要ですので、必ず低くなっていると考えた方が良いでしょう。
さて、上のシリンダーヘッドとブロックを併せて使用するのであれば、0.2mm+0.2mmで計0.4mmシリンダーヘッドの燃焼室位置は下がります。
ところがクランクからコンロッドを通して装着されているピストンの高さ位置はオリジナルの通りですので、当然圧縮比も変わって来ます。
例えばですが、基準寸法で圧縮11.5:1になる様に設計してある74mmピストンを組むとして、0.4mm燃焼室面が下がると概算でも12.2:1にもなってしまいます。
これを考慮に入れずにそのまま組んでしまうと、予想していない高圧縮の為に弊害が出る可能性や、最悪せっかく組んだエンジンを壊してしまう場合もありますので、調整が必要になります。
調整方法としてはヘッドガスケットやシリンダーベースガスケットの厚さ違いのものを使用となります。
例えばこちらのシリンダーブロックの場合、加工仕上がり後のセンターシールの溝深さが約1.9mmでした。センターシールの太さは4mmでシール圧縮率は80~85%迄が理想ですので、溝深さ1.9mm+ガスケット厚さで3.2mm~3.4mmとなり、1.3~1.5mmのヘッドガスケットが使用可能です。
ピストンキットの設計ガスケット厚さが1.1mmであれば、ヘッドガスケットを0.4mm厚い1.5mmのものにしてやれば当初の圧縮設計値11.5:1で組む事が出来ます。
センターシール溝の深さが個体差により深い場合は、ヘッドガスケットを厚くしての調整幅にも限界がありますので、その場合はベースガスケットを0.5mm厚のものから0.8mm、1.0mmのものにして調整となります。
ちなみに私らがエンジンを組む場合は、センターシール溝の深さにもよりますが基本的に調整の優先はヘッドガスケットの方でとしています。
例えばエンジンの圧縮を変更したいとなった場合、ヘッドガスケットの方が交換が容易である事が理由です。