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夏休みの宿題は無事終わり、何とか本日宿題の提出ならぬ納車が完了致しました。
昨夜には火入れが完了していたのですが、今日はその煮詰めを行いました。
敢えての1眼タイプの同調ゲージです。勿論一般的な4連もありますが(笑)、切り替えで各気筒を1つのメーターで確認する為少々手間ではありますが、4つのメーター個々が持つ「誤差」が生じない為、同調作業では好んで使っている物です。回転の上昇&下降時における4気筒のバキュームを見比べたりには適しません。
今回使用したECUはLINK製です。コンパクトで本体の定価も9万円とフルコンの中でもリーズナブルな価格設定です。
PCからのアクセス時におけるインターフェイスも優れており、メーカーから無償でダウンロード出来る専用ソフトウェアは、日本語で非常に解り易く説明されているのが大きな特徴です。
対するエンジンが同じ物である以上、インジェクション仕様でもキャブ仕様であっても結果的に求める答えは同一ですが、扱うその手順が異なります。キャブではニードルのクリップ段数を変える、またはキャブ本体を外してジェットを変更する等のセッティング作業を、対してインジェクション仕様は基本的にPCのキーボードを叩く事で作業を進めてゆきます。
ここでキャブレターに対する大きなアドバンテージといえば、セッティング作業の大幅なスピードアップと簡便さです。
キャブレターであればセッティングの変更の都度エンジンを停止してその一部を取り外し、場合によっては本体を取り外してガソリンを落としてのジェット変更となりますが、フルコンを使用したインジェクションの場合はエンジンをかけたままそれに当たる作業は一瞬で終わるばかりか運転状態をモニターしながら空燃費はもちろん点火時期も無段階に変更していく様な作業も可能です。
一度止まってセッティング変更の作業を行ってからもう一度走ってという場合、どうしても時間が空く関係でどちらが良かったか判断に迷う事がありますが、そういう事がありません。
更にキャブレターでは不可能なセッティング、例えば全開加速中に中回転域はもっと薄く、レッド手前吹け切りあたりは濃くみたいなセッティングはキャブではほぼ不可能でメインジェットの妥協点を探すしかありませんが、インジェクションの場合は各状態、回転数、負荷状態に合わせてのセッティングが可能ですのでどんどん詰めて行けます。
更に各種センサーからのフィードバックにより、燃料制御と点火進角制御を絡ませながら様々な「補正」を掛けられるのも魅力です。チューンドエンジンには要注意となる異常燃焼によるエンジンへのダメージ等も、ノックセンサーを使用して自動的に回避するという事も理屈上は可能となります。
またインジェクションにしたからと言って、適正な口径でキッチリとセッティングが出ているキャブ仕様に比べ、圧倒的に速くなる、パワーが出るといった事は期待されない方が良いと思います。
それよりも気温や気圧等にも左右されず、何時でもベストコンディションで乗れる事は、旧いバイクで現代を走るという状況において大きなメリットなのではないでしょうか。如いてはエンジンの耐久性にも好結果が望めますし、良好な始動性と軽いスロットルも手伝い、日常使いでの快適性はキャブに対して大きな優位性と言えます。また時代の流れにおける排ガスや燃費といった部分も無視できません。実際、上記の車両は旧い空冷Zエンジンながらも、インジェクション+触媒で厳しい現代の排気ガス基準をクリアしています。
となると、良いことづくめにも聞こえてきますが・・・
問題は、何度かに渡り申し上げている通り、キャブに比べコスト高になる事です。キャブを外しシステムごと総入れ替えになるインジェクション化と、ノーマルキャブからアフター物のキャブへの交換を比較する事が抑々無理な話なのですが、もう少し何とかコストを落とせないかと考えています。
昨日よりもスロットルのツキに対するセッティングを変更。
勉強と個人的な趣味も兼ね始まった空冷Zのインジェクション化でしたが、想像以上にお問い合わせを頂き、嬉しい反面問題となるコスト高が悩ましいですね。
ハードとしてのシステムはセットアップの手間とパーツ点数が多いのですが、エンジンがかかってしまえば、一度でもキャブレターのセッティングをした事のある経験者であれば誰にでもわかる程にメリットは多大です。